北海道の若手経営者を育成するために産官が連携して取り組んでいる「北海道経営未来塾」は12日、札幌市中央区の北洋大通センター4階セミナーホールで「経営実務講座」を開催した。塾生ら約40人が参加、北海道二十一世紀総合研究所の小高咲(こたか・しょう)副社長(前日本銀行札幌支店長)が『北海道経済の展望ー新型コロナがもたらす影響を踏まえて』、クリエイティブオフィスキューの伊藤亜由美代表取締役が『ストーリーのあるプロデュース~北海道における人づくり・モノづくり・地域づくり~』をテーマにそれぞれ講演した。本稿では、小高氏の講演を抜粋する。(写真は、講演する小高咲・北海道二十一世紀総合研究所副社長)

「北海道の強み、弱みがコロナによってなくなるわけではない。北海道経済の課題について論じる時、私はかねてより違和感を持っている。(日銀札幌支店長として)札幌に戻ってきて愕然としたのは、財界の方々が挨拶代わりに北海道の課題を並べたてることだった。課題というのは、解決すべき問題であって、ただ言っているだけでは解決すべき真の問題が分からなくなってしまう」

「コロナによってもたらされた北海道経済の変化の中で、真の課題とは何かを改めて考えることが必要だ。例えば、少子高齢化、人口減少は解決すべき課題ではなくて確かに起こる事象に過ぎない。それに対して、何を課題と捉えて、どこに働きかけるかについて、明確に具体的に示して公に言っていかないとかなりの人がミスリードされるのではないか」

「経済の変化のほとんどは、コロナ前から進んでいたもので、変えなければならないと認識していたもの。コロナによってそのことがより明確に突き付けられた格好だ。コロナは、集中型社会の過度な密がもたらす感染症のリスクを露呈させ、地方にとってはチャンスが訪れる変化と捉えられる」

「全国の地方が同じことを考えて、同じことを目指し始めている。例えばワーケーションでは、北海道はコロナ前から力を入れてきたが、北海道の強みは、仕事や子育てのしやすい環境、高いホスピタリティ、低い生活コストなどがある。逆に弱みは、首都圏から遠いことや寒いこと、教育、医療環境の不安、文化芸術的な刺激に欠けるなどがある。しかし、こうした強み、弱みは地方なら大体どこでも一緒という気がする。どの地方もこうしたことを意識しつつワーケーションを取り込む工夫をする中にあっては、北海道が選ばれる強み、地理的優位性をもう一回考える必要があるのではないか」

「例えば海外でも認知されている北海道ブランドと地理的優位性を活用して、アジアの富裕層にワーケーションの場を提供することを考えてはどうか。今はまだコロナで入国できないが、従来ならアジアの富裕層が各国に出かけていた展示会などを、ワーケーションを兼ねて北海道で直接できないだろうか。このように北海道ならでは、という強みをいくつかつくっていく必要があるのではないか」

「そのためにも、北海道の課題もさることながら、強みを感覚的なものではなくて、数字に裏打ちされたものとして提示していく必要がある。コロナによる構造変化も踏まえて、先行きの伸びしろのある事業分野に対してどう生きる強みなのかということを一人ひとりが考えられる情報を経済界、学会が提供していくことが大事だと思う」(この稿終わり)



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