大地みらい信金、北大発AIベンチャーの調和技研と包括連携協定

金融

 大地みらい信用金庫(本店・根室市)は12月28日、北大発認定ベンチャーでAIの社会実装を進めている調和技研(本社・札幌市北区)と包括連携協定を締結した。調和技研が金融機関とこうした協定を締結するのは初めて。地域の企業が抱える課題をAIを使って解決することを橋渡しするとともに、ファイナンス面でも支援、地域経済の持続的成長を後押しする。(写真は、大地みらい信金と調和技研の包括連携協定締結式。左から大地みらい信金・岸部芳洋常勤理事経営企画部長兼デジタル戦略統括責任者、同信金・遠藤修一理事長、調和技研・中村拓哉代表取締役、同信金・三上誠札幌支店長)

 大地みらい信金は、2011年に北海道大学産学連携本部と連携協定を締結、根室・釧路地域の産業競争力向上を支援してきた。2015年7月には、道央と道東地域の企業を繋ぐ架け橋の役割として札幌支店を開設。3年前からは、札幌開催に合わせて釧路でNoMaps(クリエイティブな発想や技術で次の社会、未来を創るためのコンベンション)を開催、先進的な取り組みも行ってきた。一方で、金庫内にデジタル戦略統括責任者を配置するなど、金庫内、取引先双方に向けたデジタル対応の布石を打ってきた。そうした中で、地域の課題解決にはAI導入が効果的と判断、調和技研との包括連携協定締結に至った。

 調和技研は、2009年11月に、北大大学院調和系工学研究室の川村秀憲教授、鈴木恵ニ教授(現公立はこだて未来大学教授)らが中心になって設立した大学発ベンチャーで、AIアルゴリズムやAIエンジンといった「脳みそ」の研究領域で実績があり、こうした「脳みそ」を使ったAIプロダクト(製品)を企業に提供、ビジネス課題を解決してきた。これまでは、首都圏から持ち込まれる案件が9割を占めていたが、最近は地域の企業からのアプローチも多く、4割が地域の受注案件になっている。

 同社の中村拓哉代表取締役は、元北海道拓殖銀行出身で地域経済の課題解決に向けた熱意が強い。今回の協定は、地域企業が直面する人手不足、技術やノウハウの伝承をAI活用でブレークスルーすることで地域の発展を支援することが狙いで、地域に強いAI企業として厚みを形成するのも目的。

 この日、大地みらい信金札幌支店(札幌市中央区)で協定の締結式が行われた。大地みらい信金の遠藤修一理事長は、「調和技研の力添えで、地域の課題解決と新たな領域への挑戦を通じ、根室、釧路地域がもっと元気になって、新たな価値を創出するお手伝いを積み重ねたい」と話した。中村氏は、「大地みらい信金は、挑戦的な金融機関として地域に密着している。地域には、匠の技を持つ企業やキラリと光る企業がたくさんある。そういう企業に向けて、新技術開発や生産性向上、新しいサービスの創造などを支援できれば非常にやりがいがある」と語った。

 既に水産加工メーカーが海産物の異物除去にAI利用を検討しており、林業関連でも具体的にAI活用が進んでいる。遠藤理事長は、「取引先の課題に肉薄して解決策を見出す協力をするのが信金の役目。コロナ禍でデジタルの必要性は加速している。金庫内部の業務改革も進め、取引先共通の課題解決に繋がればリソースを取引先と共有したい」とした。

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