ーー具体例はありますか。

 堰八 ピンチにある外食産業で好調を維持している回転寿司チェーンがあります。その要因の一つは、非接触型のサービスの徹底です。スマホ対応の座席予約システム、自動販売機の設置、セルフレジの導入、皿の枚数を数えるAI搭載カメラと支払い金額の自動計算システムなど、当初は人手不足対応のため実施してきた施策が、衛生管理の観点から顧客に支持されています。
 また、首都圏では、交通至便なATM跡地を利用した一坪の高級食パン店舗がヒットしています。狭い店舗の不便さを逆手に取り、利便性の高い立地に賃借コストを抑制した出店をすることで、人数制限をしてコロナ対策を取りつつ、高額単価の商品販売に成功した事例です。サービス分野では、ITを活用した保育支援の事例があります。子供の体温や昼寝の状況などの情報を親のスマホのアプリに転送して体調管理を行うと同時に保育士の入力義務を省くことで労働環境の改善に努めるサービスです。この他に、株高を背景にロレックスなど高級腕時計が売れたり、移動のプライベート空間確保のため中古自動車市場が活況を呈したりしています。

 道内でも、外食のテイクアウト強化、宿泊事業者の動画やVRを活用した疑似宿泊の試み、お土産需要に対応したeコマースの展開など、一部で新しい対応が見られます。今後は、さらに新商品・新サービスの展開による増収を目指し、付加価値向上による単価アップを図ることが求められます。コロナ後の急激な需要回復を見越して、今から戦略を練る必要があります。

 ーーポストコロナ時代の北海道観光の展望は。

 堰八 北海道の観光は、コロナ禍で大きなダメージを受けていますが、ここにきてホテルの稼働率に回復の兆しが見え始めています。ワクチン接種も徐々に進んでおり、おそらく今年末にかけて国内の観光需要は回復傾向が顕著になると思われます。
 一方で、インバウンドの需要回復には2、3年かかるでしょう。しかし、コロナ禍前の道内の観光客数は年間約5500万人のうち8割強が道内客で、2割弱が道外客とインバウンドという内訳でした。数だけ見ると、道内と国内客の需要だけでも十分カバーできますが、単価が圧倒的に高かったインバウンドの減少をカバーするためには、コロナ禍で学んだノウハウも活用し、付加価値の高いサービス、新商品の開発により単価の引き上げに結び付けていくことが不可欠でしょう。また、これまでインバウンドが担ってきた冬の集客対策もしっかりと打つことが必要となります。
 定山渓温泉も札幌の奥座敷というキャッチフレーズとともに札幌国際スキー場と連携したスキーリゾートをもっと打ち出してもいいのではないかと思います。

 ーー特別顧問就任後にやってみたいことは。

 堰八 これまでの銀行経営や公職を通じての経験を生かして、地域にご恩返しをする活動をしたい。当行の「道銀経営塾」などを卒業した道内の若手経営者や「北海道経営未来塾」の塾生を中心に交流機会を設け、兄貴的な立場でビジネスのお手伝いや経営のアドバイスなどを行いたい。プライベートでは、自分自身の心身両面の充電と、大好きな旅行を国内外で満喫したいですね。もちろん、「さっぽろ芸妓育成振興会」の仕事は続けますよ。(終わり)



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