釧路信用組合(本店・釧路市)は、2014年12月に経営危機に陥り公的資金80億円の資金支援を受け、経営強化の取り組みを着々と進めている。マイナス金利によって経営環境の厳しさが増し、貸出金は減少傾向が続いている。昨年6月に11年ぶりに生え抜き理事長に就任した忠村浩志氏は、「事業者と信組は仲間」という立場で訪問回数を増やし地域密着路線の徹底を図る。忠村理事長に2020年の運営方針などをインタビューした。
≪ただむら・ひろし…1960年6月生まれ、59歳、釧路市出身。東洋大学経済学部卒、84年4月釧路商工信用組合(現釧路信用組合)入組、桂木支店長、桜ヶ岡支店長、西港支店長などを経て2012年7月経営企画部部長、16年6月常勤理事、17年6月常務理事、18年6月専務理事、19年6月理事長就任≫
ーー2019年9月仮決算の概況を聞かせてください。
忠村 釧路や網走、中標津、羅臼など営業地区内の景況は、港湾関連や農業関連が活況ですが、漁業関連、住宅関連が昨年と比べると弱い。管内の個人消費は他地域よりも少し弱く車の新車登録台数もやや減っています。18年9月の中間仮決算は、最終利益段階で貸倒引当金の戻り入れが多かったので純利益は3億7400万円でしたが19年9月中間仮決算ではそれがなく、本業による儲けもマイナス金利による貸出金利息収入の減少で昨年より微減、最終利益は8900万円と2億8500万円減少しました。
ーー有価証券売却についてのスタンスは。
忠村 今年度は余資運用の有価証券には手を付けていません。6~7年前に購入した有価証券には評価益が出ているものもあって売却すると利益に貢献するものもあります。しかし、売却してしまうとその年度は良いですが、次年度以降の収益を考えたときには欠落してしまい、現状レベルの有価証券をあらためて購入しなくてはならなくなります。先々の単年度利益に影響が出てくるので、今期は有価証券について現状のまま保持するスタンスです。
ーー貸し出しの状況はどうですか。
忠村 前年対比では9月末で14億6600万円減少、貸出金は428億9900万円になりました。貸出先の中には償却やバルクセール(不良債権の一括売却)の手続きを取った先もありましたし、当組合の借入金を全額返済して新しい金融機関から切り替える先もありました。それらが今年度初めに欠落した状態からスタートしている上に、地方公共団体向けの融資も5億1200万円減少しています。営業地区が重複している他の金融機関では貸出金が減少しているところは少なく、むしろ増えているところが多いようです。
ーー貸し出し増に向けた取り組みは。
忠村 1954年に地域の事業者が発起人になって当信組を立ち上げました。現在、取引している事業先は約1300先。その事業先に職員を通わせていただき、お客さまと一緒になってどうしたら良くなるかを相談させていただいています。その中でファイナンス、金融が必要であればその部分をお手伝いさせていただくのが本旨になってきます。