釧路信用組合(釧路市)は、6月末の総代会で再建を加速する2つのプランを示した。一つは、1月に表明していた金融機能強化法に基づく公的資金注入を具体的に検討すること、もう一つは北洋銀行から常勤理事を迎え入れ今後北洋銀との連携を強めることだ。北海道財務局出身の現理事長、岩田豊氏は2つのプランの実行で同信組の再建基盤を早期に固める狙いだ。
 
 
 
 同信組は、信組の全国組織である全国信用協同組合連合会(全信組連)から2010年に30億円、11年に40億円の資本支援を受けている。11年3月期までは4期連続赤字だったが、これらの支援を受けた12年3月期に5期ぶりに黒字転換、13年3月期は1億1500万円、14年3月期も1億6900万円の黒字を確保している。
 
 自己資本比率も11年3月期の6・77%から13年3月期には8・11%、14年3月期は8・95%と国内基準である4%を上回り再建は順調だ。
 
 岩田理事長が公的資金注入の具体的検討を始めることにしたのは、景気回復感がある中で再建を加速するには、貸出金を増やすことによる貸出金利息収入を高め財務基盤を安定化することが不可欠と判断したためだ。「病み上がりの同信組のビジネスモデルを健康体に戻す好機と見ているからだろう」(信組関係者)
 
 公的資金注入はかつて危ない金融機関というイメージが広がり預金流出などが懸念されたが、不良債権問題が金融機関からほぼ一掃されている中で、むしろ積極的な経営強化策として預金者や融資取引先にも前向きにとらえられるようになっている。金融庁は金融機関検査の重点を貸出し増加に向けるなど地域経済に果たす役割を重視する姿勢に転換している。
 
 財務局出身の岩田理事長は、こうした変化を追い風に同信組だけでなく道内信組全体が前向きな経営姿勢に転換するように促すアナウンス効果も狙っているようだ。
 
 さらに、北洋銀から4月に招聘していた経営企画部副部長の荒川武志氏(53)を常勤理事に昇格させることでアライアンス(連携・協調)を強化、情報やノウハウの吸収に踏み込むことにした。荒川氏の常勤理事就任によって北洋出身者が同信組理事長に就く可能性も出てきたが、「荒川氏がポスト岩田になるかどうかは未知数。総代会で岩田理事長は北洋との連携を強めると表明したが、それ以上でもそれ以下でもないだろう。公の場での発言だけに額面以上の話は特にないだろう」(信組関係者)
 
 かつて同信組は北海道銀行から2人の理事長を招聘し、破綻前の北海道拓殖銀行からも理事長を招き入れようとしたことがあった。道銀は信組との関係が、拓銀は信用金庫との関係が強かったが、拓銀破綻以降の金融動乱でこうした関係は途切れていた。最近になって道銀、北洋とも信金・信組の協同組織金融機関と連携を強める姿勢になっている。今回、同信組と北洋が関係強化を図ることによって2地銀と信金・信組のアライアンスが新しいステージに移ったということができそうだ。


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