――ところで合併に対する取引先の反応は如何ですか。
藤谷 最初は会員や総代から『旧江差は石橋を叩いても渡らないイメージがあったが、今後の融資はどうなるのか』と心配の声が多かった。私は、『(合併によって)キャパ(=量)が増えて自己資本も十分ありますから、全く不安はないです』と話し、職員の与信枠も倍にしました。『安心してください』と。それから不安の声はなくなりました。規模拡大は取引先に安心感を与えたようです。いずれにしても私たちは、一旦取引をしたら最後まで面倒を見ます。業績が悪化したからといってすぐに撤退しません。
――檜山地区と函館地区の預金・貸し出しの比率はどれくらいですか。
藤谷 貸し出しはやはり函館地区のウェートが高い。檜山地区は個人預金がものすごく多い地域です。旧江差のときから、こちらで資金を調達して函館地区で運用するスタイルでした。旧江差は函館市と北斗市に支店がありましたが、その2支店で旧江差の貸し出し全体の約65%を占めていました。
――檜山地区での預貸率はどうですか。
藤谷 相当低くて約25%。金庫全体では約47%ですが、旧江差の函館市と北斗市を合わせた地域はオーバーローン状態で預貸率200%くらいになっています。旧函館は、函館市内の店が多いのでもう少し力を入れると貸し出しはさらに増えて預貸率は上がると思います。
――函館地区の金融機関同士の競争環境はどうですか。
藤谷 非常に激しい。北海道の2つの地方銀行や東北の地銀、メガバンクもあってものすごい金利戦争です。当金庫が考えているのは、ある程度のミドルリスクを取って行こうということ。そのためにも、金庫内で中小企業診断士など国家資格を持つ職員を積極的に育成したい。中小企業診断士は以前1人いましたが、定年退職して今はゼロ。是非、2~3人の資格者を抱えたい。資格が取得できる環境をバックアップしていかなければならないでしょう。
――人口減少で地域経済も縮小傾向が続いています。その中で融資を伸ばしていくというのはなかなか難しい。
藤谷 流入人口を増やすために空き家対策ローンを作る予定です。檜山地区では商店などの閉店が多いので、その場所を使って開業したい人には、無担保無保証で500万円程度を上限に始めようと考えています。町ともタイアップして固定資産税を半年程度免除したり、軽減するなどして移住の呼び水になれば良いと思っています。新幹線が開業して、徐々にこちらにも観光客が増えています。“いにしえ街道”という歴史ある建物が並んだ街道もありますから、この古さを生かしてできることがないか模索したい。
――地方の支店はコスト割れしているところもあるのでは……。
藤谷 旧熊石町は八雲町に合併されて人口が減っています。今は2700人ぐらいしかいません。そこに店舗を置いていますが、採算はなかなか厳しい。でも、私たちは郡部から撤退しません。その代わりやり方を変えました。フルバンキングから預け入れと引き出しだけを担当することにしたのです。融資は隣の乙部町から担当者が伺うようにして店を存続させました。そういう方法が今後増えていくと思います。