――今期の決算は、金融環境が厳しいだけに文字通り各信金がこれまで取り組んできたことの総決算になりますね。しかし、赤字が続出ということにはならないのではないでしょうか。
斎藤 各信金ともに赤字決算にはならないと思います。決算がまとまる6月下旬には新聞などメディアを通じて「全22信金黒字」という見出しが躍る可能性があります。問題は黒字の出し方です。そこに注目しなければいけない。黒字だから良いということにはならなくて、稼ぎ方が問われているからです。
――今期の決算によって来期以降の経営の方向性が決まることになるかもしれません。まさに転機の決算になる可能性があります。いつの時代も信金経営は厳しく、楽な時代など1回もなかったという理事長の話はよく聞きますが……。
齋藤 採算が取りにくくて銀行が手を出さないからこそ、協同組織の信金が存立するテリトリーができ上がるわけです。元来、儲かるような市場ではありません。楽ではないから、継続的に事業を安定化させる取り組みが大事になってきます。
信金は協同組織ですが、農協や漁協のような協同組合ほど会員同士の紐帯は強くない。でも、会員制組織である以上、その利点をもう一度見直す必要がある。今までは、どちらかというと、信金からお金を借りるのなら(信金への)出資が必要ということでやってきたわけですが、改めて信金からお金を借りるメリットが借り手側に伝わるような営業スタイル、ビジネススタイルを確立していく必要があります。それが確立できれば銀行と大きな差別化になるでしょう。
――信金と銀行は、どこがどう違うかということをもっと利用者や一般の人たちにアピールしていくことが大切ですね。
斎藤 信金の方々に学生の前で講義をしていただく機会も多いのですが、私自身がすごく気になることは、『私たちがやっていることは銀行と一緒です』とその方々が必ずアピールすること。私からするとおかしいと感じます。銀行と一緒だったら銀行で良い訳です。銀行と違うからこそ信金が存在してきたことに自負心を持っていると思うので、そこをもっとアピールすべきです。『銀行と一緒』と言っているから、日々の活動で同質化を招いてしまっているのでは、と言いたくもなります。
大学にいるから悠長なことが言えるのかもしれませんが、信金マンだったら信金マンの“魂”を勉強して欲しい。信金がどうして成り立ってきたのか、歴史的な経緯も踏まえて体得してもらいたい。そこに共感して働く人たちが集っていくことが信金の文化になります。金融マンという大きな括りで、自分たちを自己規定してしまうと銀行マンの意識と変わらなくなってしまいます。