――合併新金庫の主戦場になる道央圏の将来をどう見ていますか。
吉本 道央圏は、18年度に北海道横断自動車道が余市まで開通、30年度には北海道新幹線が長万部、ニセコ、倶知安、小樽を通って札幌まで延伸されて時間的に大変近い区域になります。加えて26年に札幌冬季オリンピックを誘致予定であることなど、合併新金庫のエリアである道央圏には様々なチャンスが生まれてきます。それを全力でしっかりと支えます。
3金庫のエリアは、農林水産の一次産品を含め、特産品・名産品の多い地域。点と面の展開で地方を守りながら一大消費地である札幌圏を抱えた道央圏の地域経済活性化、地方創生に貢献したい。
――地方創生で信金が果たす役割についてどう考えますか。
吉本 マイナス金利政策導入以降、金融機関の金利競争に拍車がかかっています。しかし金利競争で他の金融機関の融資を肩代わりしても新たな資金需要が発生しているわけではありません。我々がやるべきことは、地域の中小企業・小規模事業者の本業を力強く支援し付加価値をつける経営をサポート、成長・再成長させること。それが地域経済の活性化、地方創生につながっていきます。
昨年9月に金融庁が公表した「金融行政方針」でも、取引先企業の事業性評価やそのことに基づく融資、本業支援の取り組みが期待されています。今後も、我々信用金庫が得意とする顧客本位のリレーションシップバンキング(地域密着型金融)をしっかり継続していくことが大切だと考えています。
――期待される道内信金の将来像についてご意見を。
吉本 道内23金庫は、それぞれ地域に密着し健全経営を貫いています。広い北海道ですから、単純に規模では語れないし、将来像も一つだけの答えはないと思います。しかし、地方の人口が減少する中、今回のマイナス金利政策は、金融機関の利ザヤと余資運用に間違いなくネガティブに作用します。先々は厳しい経営環境に入るでしょう。しかし、信用金庫がメガバンクのようにトランザクションバンキング(個々の取引の採算性や財務計数のみを重視して取引すること)の渦中に巻き込まれたり、そこに足を踏み入れ過ぎると最後は体力勝負になり厳しい。
私は、やはり03年から始まったリレーションシップバンキング(地域密着型金融)の実践、原点に戻るしかないのではないかと考えます。そのためにも、信金業界にとってとても大切なことだと考えていることは、各金庫が「自分達が守るべき地域がどこか」ということを明確にし、地域の課題解決に必要な人材をその地域に残し、育成し、懸命にアイディアを出してもらうことです。
――メガ、地銀、ゆうちょ、信組などの金融業態間の競争や金融環境はどう変化すると予測していますか。
吉本 札幌市には以前から全ての業態が進出しており、元々厳しい金融競争がある地域。我々信金業界も、当金庫をはじめ札幌市内には16金庫、80店舗を超える営業店があり競合が皆無とは言い切れません。しかし、向かっていくべきは他の業態であり信金業界は今後も連帯と協調の精神を忘れてはいけません。
金融環境等については、マイナス金利政策によって、金融機関経営で預金積金の「負債管理」が重要なテーマの一つになってきたといえます。また、今期は、マイナス金利の影響が決算にフルに影響します。現状の金利環境、金融競争が長く続くと厳しい収益環境になると思います。
ではどういう方針で経営していけば良いか。短期的な視野ではなく、次の10年、20年に経営を担う者のために、今は各種リスクに配慮した「我慢の経営」が必要です。私の経験から言えば、こういう時の経営や資金の運用は「シンプル・イズ・ベスト」が基本だと考えます。