今年5月、札幌のメーンストリートである駅前通に新本店ビルが竣工した札幌信用金庫。95周年の節目の年に四番街商店街をはじめとする大通ゾーンに新たな歴史を刻み始めた。1年4ヵ月後の2018年1月には札幌・北海・小樽の3金庫が合併、預金量1兆円を超える本道初のメガ信金が誕生、その本拠となるのもこのビルだ。地方創生で信金の役割が高まる中、マイナス金利政策で経営環境は厳しさを増す。来たる3金庫合併を前に、札信金の吉本淳一会長(61)に合併の狙いや信金業界が果たすべき役割などをインタビューした。(※インタビューの詳報は9月15日発売の北方ジャーナル10月号に掲載予定)
〈よしもと・じゅんいち〉1955年3月生まれ、61歳。78年3月小樽商大商学部経済学科卒、同年4月札幌信用金庫入庫。2003年6月理事、08年1月常務理事、同年6月代表理事理事長就任。12年6月代表理事会長。
――創立95周年、念願の新本店ビルが竣工しました。
吉本 創立95周年の記念すべき年に、当金庫の歴史的一大事業である新本店ビルおよび本店ゾーンが完成したことを大変嬉しく思います。旧本店ビルは、1972年の札幌冬季オリンピックを前にこの地区の再開発第1号ビルとして66年に竣工した建物。奇しくも今回もこの地区の建て替え第1号ビルになりました。10年ほど前から旧本店ビルの老朽化対応の検討に入ったのですが、権利関係の調整など難しい問題もあり、2012年4月に新本店ビル建設を私の専担事項の一つとする新しい会長制を導入、対応を急ぎました。
その結果、半世紀振りに建て替えとなった新本店ビルおよび本店ゾーンは、道内最大の商店街である四番街地区の街づくりに間違いなく貢献できると確信しています。
――この新本店ビルは、18年1月、北海道で初めて誕生する預金量1兆円を超える信金の本店・本部ビルになります。あらためて3金庫合併の目的や効果について教えてください。
吉本 合併で統合された資本・資産を有効活用する事で、我々3金庫の営業エリアである道央圏の地域経済活性化・地方創生により一層貢献していくことが目的です。3金庫は、元々札幌圏で古くから営業展開を行っていましたし、北海信金、小樽信金は共に後志管内で営業展開していました。これら地域は隣り合う道央圏という一体の区域です。それであれば、我々3金庫が道央圏をしっかり守るという目的の下で一つになり、経営の効率化を図り、地域経済活性化・地方創生により一層貢献していくべきだろうと決断したのです。
北海道で初めての預金量1兆円を超え、自己資本が700億円を大きく超える信金が誕生することになります。これを最大限有効活用し、ダイナミックな経営を行いたい。
――そもその合併のきっかけは。
吉本 きっかけの一つはリーマンショックです。あの時、当時あった24金庫のうち8金庫が赤字を余儀なくされました。リーマンショックは一時的なものですから乗り越えれば対応できますが、その後の環境変化は一時的ではなく長く続く危機感がありました。お客様や取引先を守っていくにはどうしたらいいのか、そこからスタートした話でした。
――合併の進捗状況は如何ですか。
吉本 現在、3金庫の代表理事で組織する「3金庫合併委員会」、会長・理事長で組織する「トップ会合」、下部組織である11の「専門部会」を組織して積極的に協議を続けています。会長や理事長同士の信頼感はとても大きいので特に大きな隘路もなく計画通りに順調に進んでいます。
――合併後の新名称はいつごろ決まりますか。
吉本 そのことはよくマスコミから聞かれますが、現在、合併趣意書のコンセプトに基づき、3金庫間で協議を進めています。いずれにしても来年6月に予定されている各金庫の総代会で承認をいただかなければなりません。それまでには公表しますが、もう少し時間をください。江差信金と函館信金が合併して来年1月に誕生する新金庫名は「道南うみ街信金」。とても良い名前だと思います。我々もお客様、お取引先、OB、OG、役職員に納得していただける名前を考えています。