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 ――人口減少、少子高齢化が北海道の場合、全国ペースよりも早い。成長基盤を作っていくのは、ある意味で時間との戦いです。
 
 齋藤 地域人口の社会的増減は日本国内で完結する部分でいうと、ゼロサムというか同じパイをとりあっている部分がありますから、基本的には希望出生率をしっかり近づけていくことが必要でしょう。北海道で特徴的なのは、札幌圏への人口一極集中。しかし、これは場合によってはダム効果にもなっていて、本州に流れるのを札幌で堰き止めるというプラス面もあります。一方で急激に全道から札幌に集まってくると、札幌以外の地域は疲弊するというマイナス面もある。最近、札幌市内でプラスの動きが出てきたことに東京から本社機能を移すことがあげられます。アフラックやアクサ生命が出てきましたね。理系出身者の職場が少ないことで本州に流れていっているという分析も出ていますから、理系企業の本社機能の1部と言わず全部を地震の少ない札幌に移転する動きが加速すると良いですね。
 
 ――北海道経済成長の大きなきっかけになるのが、空港民営化だと思います。どう考えますか。

 齋藤 今、空港は新千歳に一極集中になっています。コンセッション(所有権を国などに残して運営を特別目的会社が行うスキーム)でやる方向だと思いますが、それによって各空港との連携がより強力になれば色んな部分でプラスに働くと思います。道内の2つの金融機関にもそれぞれ強み弱みがありますから、空港民営化に関して全道エリアで切磋琢磨していくことでプラスに働いてくれればいいなと思います。 

 ――さきほど札幌一極集中の話がありましたが、信用金庫もどんどん札幌に進出しています。本州など他地域の信用金庫に比べて経営基盤は盤石ですが、将来的には不安要素もあります。

 齋藤 各信金はしっかりとした理由をもって札幌に進出していると思いますが、札幌の競争がそれだけに激しくなってきているのも事実です。北海道が他の地域と比べどうなるかということは単純には言えないですが、これだけ広い地域ですから、将来的に統合すれば良いのかといっても統合メリットがあるのかどうか、またそれぞれの収益がどのようになっているのか収益分析も必要になってくるでしょう。(不安要素の解消は)状況、状況に応じてだと思います。 
 
 ――23ある信金の合併・再編に関しての見解はいかがですか。

 齋藤 各金融機関がしっかりと考えて自分たちの強み、弱みや統合、合併することのメリットなど色んなことを考えて(札幌・北海・小樽や函館・江差の合併を)決断されているのだと思います。今後どうなるのかということに関しては、それこそ札幌以外の地域では人口が右肩上がりに増えませんから、その中でどう将来のビジネスモデルを考えていくのか、しっかりと金融の仲介機能を果たしていけるのかをそれぞれの金融機関が考えて(合併再編を)やっていくことだと思います。先ほど申し上げたような収益分析の中で、自分たちが地元で充分に将来もやっていけると思うのか、あるいは地元を出ていこうと思うのかの判断に分かれてくると思います。
 
 ――札幌証券取引所は、東京以北で唯一の証券取引所ですが、札証の役割や今後の存在意義についてはどう考えますか。bsp;

 齋藤 今やネットでも取引はできるようになってきていますが、地元での資金調達とか上場して企業を育てていくということになれば、地元に証券取引所がある意義は非常に大きい。札証ではIR活動とか成長塾など幅広い活動をしており多くの参加者がいます。企業が札幌、あるいは北海道に拠点を置きながら大きく成長していこうとした場合に、相当プラスになる機会を与えてもらえるものだと思っています。札幌以外でも各地の信金などとタイアップして説明会も開催しています。
  
 私が2012年から1年間、道財務局の総務部長をしていた時に「北の達人コーポレーション」が上場しましたが、よく取引所の方々と「1年に1つの新規上場は欲しいね」という話をします。アンビシャス市場に新規上場してから大きい市場にステップアップしていけば良いのです。1年に1社でも上場すれば地元はもっと応援して、証取所の存在感も増してくるでしょう。道内からはニトリホールディングスやアークスなどの大きな企業が育っていますから、地元経済のインフラという位置づけでより一層盛り上げられるように経済界も含めて応援していくことが大切でしょう。福岡証券取引所は、地元が一体になって応援しているようですから札幌もより一層盛り立てていかなければと感じます。
 
 ――福岡には地域特化型の福岡リート投資法人が設立されてJリート銘柄になっています。札幌にもこうした地域特化型の投資法人の設立が期待されます。

 齋藤 確かに札幌冬季オリンピック・パラリンピック誘致に成功すれば、そういう動きはより強くなるかもしれません。地元の不動産関係や金融証券業界で機運が盛り上がるような環境や仕組みが生まれてくれば良いですね。今年度下期に、ほくほくフィナンシャルグループが共同出資で証券会社を設立するようですが、北陸・北海道に営業拠点を置くそうなので、より地元色の強い証券会社がさらに増えることになり期待が高まります。
 
 ――最後に座右の銘や趣味などをお聞かせください。
 
 齋藤 40代半ばからマラソンを始めましたが、マラソン選手の野口みずきさんの言葉に「走った距離は裏切らない」というのがあります。努力は必ずではないにしても報われると思います。財務省の本省にいたころは、休み時間や早朝、夜中に皇居の周りを走ったりしました。札幌に来てからは、北大構内や新川から銭函方面まで走っていましたが、最近は走る努力をしていない。だからこの前のマラソン大会も大変不本意な記録に終わってしまいました。「走った距離は裏切らない」を逆に言うと、「走らないと確実に結果として現れる」――そのことを今、痛感しております(笑い)。
 
 ――本日はありがとうございました。

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