道内23信用金庫の2015年9月末仮決算が4日まとまった。本業の稼ぐ力は逆風に晒されているものの取引先の倒産減少による信用コストの戻りや預金保険料の減少などスポット的な順風によるプラス効果で純利益ベースでは前年中間仮決算時より3・6%増、117億円6100万円になった。(写真は、札幌信金、小樽信金と合併を決めた北海信金本店=余市町)
純利益ベースで見ると10億円を超えたのが、旭川信金(16億5800万円)、帯広信金(14億7800万円)、苫小牧信金(12億8500万円)、札幌信金(10億2900万円)の4信金で、旭川と苫小牧は前年中間より利益を上積みした一方、帯広は23%、札幌は20%それぞれ減少させている。道内23信金のうちで前年中間よりも利益が増加したのは12信金、減少したのは11信金。
23信金全体の平均残高ベースでみると、預金が初めて7兆円を超えて7兆121億円(前年中間期は6兆8860億円)となったものの貸出金は2兆9813億円(同2兆9447億円)で、預金に占める貸出金の比率である預貸率は42・51%と前年中間期より0・25ポイント下がった。平均残高ベースで預貸率が50%を切っている状態は6年間続いており、預金が増えてもそれに見合った貸出先が増えていかず、本業の稼ぐ力の源泉である金利差収入が減少する傾向が続いている。
稼ぐ力に繋がる各種の利回りを列挙すると、▽有価証券利回り1・12%→1・09%▽貸出金利回り1・95%→1・86%▽資金運用利回り1・28%→1・21%▽資金調達利回り0・06%→0・05%▽預金貸出金利ザヤ0・88%→0・86%▽総資金利ザヤ0・21%→0・20%というように減少のトレンド。
一方、稼ぐ力の基礎体力をつけるための経費削減などの指標を見ると、▽経費率1・01%→0・95%▽人件費率0・54%→0・53%▽物件費率0・43%→0・39%▽預金原価率1・07%→1・01%▽預金利回り0・06%→0・05%とこちらも下がっており余分な脂肪のない筋肉質な体制に近づいている。
かつて金融機関を苦しめた不良債権はとっくに過去のものになり23信金全体での不良債権比率は、前年9月時点の4・84%から4・42%に下がった。倒産減少によって過去に積んだ貸倒引当金の戻り、預金保険料の減少など経済環境の安定による効果が信金の利益を押し上げている。
さる信金関係者は、「倒産が少なく信用コストの低水準状態がこれほど続くのは過去に体験したことがない」と話す。首都圏と違って地方の景気体感は減速傾向に入っており、金融円滑化法の実施時期に債務者区分を凍結した実質的な不良融資先が立ち行かなくなる潮目に向かうかもしれない。