ディール企画の野呂幸司社長が横河工事の札幌地区安全大会で講演、『山岳遭難事故が遺した教訓を危機管理に活かす』

経済総合

 商業施設の建築設計を手掛けるディール企画の野呂幸司社長が、横河工事(本社・東京都豊島区)の平成25年度札幌地区安全大会で講演した。テーマは、『山岳事故が遺した教訓を日々の危機管理に活かす』で、野呂氏が大学時代に遭遇した冬山での体験やそこから得られたリーダーの条件、また用途制限で建設できなかった地区に商業施設を建てた例など自身の経験から得られた生きる術(すべ)について語った。横河工事関係者や協力会社などから約60人が参加した。(写真は、講演する野呂幸司社長。2013年6月25日午後)
 
 野呂氏は、道教育大函館分校の学生時代、山岳部に所属。昭和37年にリーダーとして冬の旭岳縦走を指揮する。冬山は天候が急変する。野呂氏の一行11人も足下から吹雪くブリザードに見舞われ雪洞を掘って避難。
 
 しかし、雪洞そのものが吹き飛ばされ一晩吹きさらしの中で歌を唄いながら過ごした。翌朝、頂上に向かいその先にある温泉を目指す。吹雪は収まっていたものの斜面は凍っている。ピッケルで凍った斜面に穴をあけて登った。頂上に着くと、仲間の一人が「カラスが飛んでいる」とつぶやく。
 
 野呂氏はその光景を今でも鮮明に覚えているという。「極度の緊張感で精神的に参ったことによる幻想だったのだろう。訴えたいのは、『ある一線を越えたらどうなるか』ということに備えなければならないということ」と語った。
 
 一行11人のうち生還したのは野呂氏1人だけ。自らも凍傷で足首から下を切断、心にも深い傷を負ったという。
 
 野呂氏は、この冬山遭難でリーダーとしての教訓を得たと語り、「1つは部下の話をきっちりと聞くこと。2つは聞いたことに答えを出すこと。3つは答えが間違っていたとしても『俺が責任を取る』という覚悟を持つこと」とした。そのうえで、野呂氏は「人生は一回しかない。3つの条件を積み重ねて行けば周りの人たちにもプラスになっていくはずだ」と訴えた。
 
 また、野呂氏は商業施設の建築設計の仕事を始めたころ、地区の用途制限に引っ掛かり施設が建設できない事態にも直面したこともある。「何とかできないと考え、札幌市役所のある人に『どうしたら良いか』と尋ねた。すると、建築基準法48条に但し書きがあると。住民が賛成すれば例外として認められるということで町内会長を回り賛成をお願いし、審議会で例外が認められた。札幌市内で48条適用の第一号になったのが、私が携わった案件だった」と述べた。
 
 役所が判断するのではなく、そこに住んでいる人たちが判断してマチを変えていき、安心して暮らせるマチを作って行くことが大切だと野呂氏は言う。
 最後にこう締めくくった。「人は人によって支えられている。人は人の間で人生を育む。人生には無限の可能性がある。それをわきまえておくことが人生を豊かにする」

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