地域の実情やその企業が歩んできた歴史などを細かくフォローしたうえで、事業承継に結びつける一般社団法人バトン(札幌市中央区)が事業を開始した。道内の中小零細企業では、後継者難から廃業を余儀なくされるケースが増えている。(一社)バトンでは、技術やノウハウ、暖簾がある中小零細企業の事業承継に特化、きめ細かな対応で文字通り次世代にバトンを渡すことを狙いにしている。(写真は、(一社)バトンの代表理事・久保智人氏=右と理事・草薙平氏)
(一社)バトンは、2024年3月初めに設立された。企業の法務部門サポートや事業コンサルティングを行っている合同会社、企業法務Matching(札幌市北区)の久保智人代表社員CEO(38)が代表理事となり、同じく同社で業務執行社員を務める草薙平弁護士(31、アンビシャス法律事務所)が理事に就任してスタートした。
事業承継やM&Aは、大手仲介企業が専門に行っているが、こうした企業では、あらかじめ事業譲受を望む企業をクランアントとして登録したうえで、事業譲渡を望む企業が現れた場合にマッチングをするケースが多い。また、大手企業は地域の中小零細企業まで手が回りづらいほか、事業者の実態に即した、オーダーメイド的な事業承継に踏み込めない側面もある。
最近では、後継者不足から廃業する地域のミニスーパーや公衆浴場、小規模な食品製造会社などが目立っている。こうした企業の中には、独自の製造技術を持っていたり、地域の生活に溶け込んだ地域コミュニティの役割を果たしたりしている企業もある。(一社)バトンでは、大手仲介企業が扱わないような、こうした地域に根差した中小零細企業に的を絞って事業を展開する。
資産の再査定(デューデリジェンス)や商流の移管、資金調達等に関しては、企業法務Matchingが、設立から6年間で積み重ねてきたノウハウや人脈、金融機関や信用調査機関とのアライアンスを活用して対応する。(一社)バトンの久保代表理事は、「企業の実態を見極めたうえで、最適な譲渡先を紹介するフェイス・トゥー・フェイスのきめ細かい対応をしたい」と話しており、仲介手数料も低価格で行うことにしている。なお、同法人は、中小企業庁のM&A支援機関登録も行う予定。