Rapidus(本社・東京都千代田区)が千歳市美々ワールドに次世代半導体工場を建設することに伴い、北海道、千歳市、同社の3者は、2023年5月22日に千歳市の「北ガス文化ホール」で、プロジェクトの説明会を開催した。Rapidusの小池淳義社長や鈴木直道知事らが、概要や道のデジタル集積の取り組みなどについて話した。参加者は当初予定の1000人を超え、1400人になるなど関心の高さをうかがわせた。(写真は、小池社長が説明会で示した次世代半導体工場のイメージ図)
小池社長は、「次世代半導体プロジェクト紹介」と題して講演。回路線幅2ナノメートル(1ナノは10億分の1)のパイロットラインを2025年初めに、量産ラインを2027年初めに整えることをあらためて示した。小池氏は、量子コンピューターなど高性能半導体が求められる一方で、セキュリティシステムや自動運転、ロボット、金融などでは低消費電力の半導体が必要になってくるため、両方に使える2ナノメートル半導体の需要は高まるという見通しを示した。その分野で必要なのは、専用チップで各目的に合わせて、早く的確に展開することが求められているとした。
小池氏は、現在の半導体生産が設計、前工程、後工程に分かれている、水平分業体制であることに触れ、「互いに壁がありスピードが遅くて、コストも高くなりがち」と述べ、Rapidusはスピードに集中して早く作ることを主眼にすることを強調、「今までにない新しいビジネスモデルを導入する。設計、前工程、後工程の3つ兼ね合わせて効率よく、早く作るビジネスモデル『RUMS』(ラムス=ラピッド・アンド・ユニファイド・マニファクチャリング・サービスの略)がそれだ。各工程のサイクルタイムを短くして、効率よく安く作ることに徹したい」と話した。
北海道は、データセンターや今回の次世代半導体拠点などを集積させた「北海道バレー構想」を進めているが、Rapidusも積極的にこれに関わることにしている。小池氏は、「米国ニューヨーク州アルバニーの『NY CREATES』に負けないような『北海道半導体センター』を創設して、日米欧の産官学連携による先端半導体人材の相互交流、人材育成を図り、北海道を日本の次世代製品の開発発信基地にしたい。北海道全体が元気になって日本を押し上げていくことを推進していきたい」と述べた。
建設する次世代半導体工場について、再生可能エネルギーによるゼロカーボン化、完全自動操業、究極のリサイクルを行う新しい概念として「IIM(イーム=イノベーティブ・インテグレーション・フォー・マニファクチャリングの略)」と名付けることも示した。「千歳と世界が繋がり、千歳が国際的な都市になることを夢見ている。皆さんとともにそれを現実の世界で展開していきたい。メードイン北海道を全世界に展開していきたい」と語った。