札幌証券取引所は10月28日、同所2階大会議室で上場会社連絡会を開催、北海道大学の寶金清博(ほうきん・きよひろ)総長が「北海道大学が進める産学連携」をテーマに講演した。連絡会は年1回開催しているもので、この日は札証単独上場企業のうち10社のトップと会員証券会社関係者が出席した。(写真は、北大の資産運用に前向きな姿勢を示した寳金清博・北大総長)
寳金氏は、北大の最も大事なミッションの一つとして、卒業生が地元で就職できる状況を整えることがあるとして、産学連携推進、社会共創推進を強化、「これまでは文部科学省一辺倒だった関係を、地域の様々なステークホルダーに広げ、地域一体となったエンゲージメント経営を進めていく」と話した。
その上で、北大の学生たちに起業マインド、アントレプレーシップ教育を行い、スタートアップ支援、ベンチャーキャピタル創設のエコシステムの構築を進めることを示した。寶金氏は、「国内のスタートアップ都市ランキングで、札幌市は上位に入っていないが、効果のあるエコシステムをつくる環境は整っている。ロールモデルが身近にいて若者も多く、全国の住みたい街ランキングでも常に上位で魅力度は高い。札幌市もスタートアップに熱心に取り組んでおり、1位の東京に次いで起業しやすい街になることを目指すのが、我々の役目でもある」と強調した。
北大キャンパスの遊休地利用にも触れ、「国立大学法人法の改正で、土地の資産運用はできるようになっている。東大も白金で教育研究機関と民間マンションの複合建物を造っている。東工大は田町の遊休地に定期借地権を設定して賃貸している。南キャンパスでもそうした利用が可能な土地もあるので、学会参加者や海外研究者が宿泊できるような施設との複合建物が想定できる。大学としてキャッシュを継続的に生む計画も必要なので、札証上場企業の知恵を借りなければならないことがたくさん出てくるだろう」と話した。
さらに、北大植物園ついて、「全面的に更地にすることは歴史的価値から言ってもありえないが、遊休地的な部分があるので、植物園の植物の価値を利用しながら、『イノベーション・コモンズ』(共創拠点)のようなものをつくっていくのも一つかなと思う」と述べた。
最後に、札証との連携について、「札幌に証券取引所がある意味は大きく、札証は宝だと思う。ベンチャー育成の情報交換など連携協定も考えたい。北大は、これまで大企業や海外企業としか話をしないという雰囲気があったが、それが『平成の失敗』でもあった。アメリカは、1990年代からオープンイノベーションの時代に入り、企業や大学の所属や専門分野にこだわらず、横展開ができるようになった。当初は、こういう社会はうまくいくのかと疑問だったが、平成の間に大きな差がついた。私は、大企業だけでなく中小企業が技術や人材の横展開を可能にするプラットフォームとして、札証が機能するのではないかとみている。『平成の失敗』を取り返す『令和の逆襲』の場として、札証が利用できるのではないか」と強調していた。