北海道大学は、2021年4月から大学院農学研究院に寄附講座「北海道ワインのヌーヴェルヴァーグ研究室」を開設する。ニトリホールディングスやコープさっぽろ、北海道ワインなど民間6社が総額6000万円を寄附して3年間開講する。北大は、この講座をベースに「北海道ワイン研究教育センター」の設置を目指す。(写真は、道庁で26日に行われた北大大学院農学研究院に開設される寄附講座「北海道ワインのヌーヴェルヴァーグ研究室」の会見。左から鈴木直道・道知事、似鳥昭雄・ニトリHD会長、寶金清博・北大総長、大見英明・コープさっぽろ理事長、嶌村公宏・北海道ワイン社長)

 北大大学院農学研究院は、2015年から道庁経済部と連携して「ワイン塾」や「北海道ワインアカデミー」などを開催、ワイン産業を担う人材教育に携わってきた。「北海道ワインアカデミー」の修了生は今年度で累計145人となり、そのうち11人が新規にワイナリー7社を開設するなど、実践的なプログラムとして実績を積んできた。

 北大は22年度から国立大学法人改革第4期に入ることを念頭に、社会との連携をより強く打ち出すことにしており、その一環として「北海道ワイン教育研究センター」を共創拠点として開設する構想を描いている。そのためのベースづくりとして今回、寄附講座「北海道ワインのヌーヴェルヴァーグ研究室」を開設することにした。

 寄附講座開設にあたって、北大は道庁に仲介を依頼して賛同企業を募り、ニトリHD、コープさっぽろ、北海道ワイン、Niki Hillsヴィレッジ、キャメルファームワイナリー、アミノアップ化学の6者が総額6000万円を寄附することになった。講座では、「北海道ワインアカデミー」を充実させて社会人向けに履修資格を得ることができるプログラムを開設するほか、北大の全大学院生を対象にした共通講座を開講。また、連携機関と協力してワイン研究を推進、その成果をシンポジウム等で発信、「北海道ワイン教育研究センター」設置に向けた調査研究も行う。研究室は、農学研究院応用分子微生物研究室教授の曾根輝雄氏が兼任するほか、現在北海道ワインに務めている佐藤朋之氏が特任准教授に就き、国内やカリフォルニア、フランスから客員教授7~8人を招く体制とする。

 北海道は、国内有数のワイン産地として成長しており道内にはワイナリーが47ヵ所と10年間で3倍に増加している。昨年は、池田町のブトウ・ブドウ酒研究所が独自開発したブドウ品種「山幸種」が国際ワイン・ブドウ機構に品種登録されるなど道産ワインに注目が集まっている。北海道のワイン生産はポテンシャルが高いものの発展途上で、世界一を目指すにはワインの研究と人材育成を担う拠点が必要ということで北大は、「北海道ワイン教育研究センター」設置の第一歩として寄附講座の開設を進めた。

 北大大学院農学研究院長の西邑隆徳氏は、「ワインは微生物が作ると言っても良いので、寄附講座では微生物のメカニズムを研究して新品種の開発も進め、10年後には全道各地にワイナリーができるようになれば良いと考えている。道内各地には、チーズ工房があるので、ワインとチーズ、ブトウ栽培と酪農というように既存作業とワイン産業、さらに観光産業がミルフィーユのように重なり合って重層的な産業構造が構築できれば良いと思う」と話している。
 なお、ヌーヴェルヴァーグとはフランス語で新しい波の意味。「私たちは新しい波をワイン研究から起こしていき、既存産業を含めて新しい波が全道に波及して魅力ある北海道になればと考えている」(西邑氏)と意欲を見せた。



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