元北大大学院経済学研究科教授で現札幌国際大学学長を務める濱田康行氏は、毎年恒例の「株価」、「金利」、「為替」の見通しを明らかにしている。それによると、「株価」は数字では示せないものの世界比較で見ても先進国では格安のため高配当利回りの銘柄がたくさんあること、「金利」は円安にならない限り高くならないこと、「為替」について70円台後半は底で、円への避難が一段落すれば円高へ進む見通しを示している。(写真は、濱田康行氏)
2012年は国連が決めた国際協同組合年ということもあり、利潤を目指す民営企業が経済活動の主な担い手となる資本主義の経済体制の限界がより顕著になってくると濱田氏は指摘。その現象として「デフレ構造」が続き、産業技術や安価なエネルギー、金融制度という「3つの成長要因の消失」、そして国家と国債の信認低下、つまりの「ソブリン危機」があるとする。
その中で、日本を省みると①65歳までは働く意欲がある②先端技術、伝統技術の基盤がある③ゆっくりとしか進まない脱原発、科学技術と自然エネルギーによってエネルギー危機が起こる可能性は低い④起業家精神がまだある⑤連帯と絆がまだまだある――として、12年は再生の新しいモデルを示すべき年にしなければならないと強調。
中でも成長要因を消失させている安価なエネルギーと金融制度を作り変える作業が必要になってくると指摘する。
そのうえで「株価」について、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)が最低で1年で20%も下落したため世界比較で見ると先進国では格安銘柄が多いと分析。しかし、3・11の1周年まで動かず、リスク要因には東京圏の地震や原発収束の遅れ、ソブリン危機、円暴落があるとする。それでも、低い倒産確率で無借金、PBR1倍以下という高い配当利回りの銘柄は多いと見ている。
「金利」については、円安や諸相場の暴落がない限り金利は高くならないと見通す。日本の不安が和らげば長期金利の多少の上昇があるが、金融機関の業種選別は強まってくるため、小企業の場合は説明能力と証拠能力が今まで以上に求められると促す。
「為替」は、70円台後半は底だとし、ドル安に困っている中国やユーロ不安による円避難が一段落すればドル高の前に円高になる可能性があるとしている。原油価格が引き金になるアメリカや日本でのインフレを警戒する必要も言及した。
濱田氏は、毎年の「株価」や「金利」「為替」の動向を占う“濱田予想”を行っている。12年は、さてどういう年になるか。