カラカミ観光(ジャスダック上場)のMBO(経営陣参加による買収)を実施するため創業家会長と同社社長が設立した「KKT」が受け皿会社になって同社株のTOB(株式公開買い付け)が実施されているが、買い付け期間も残すところ2日となりインサイダー取引疑惑の行方が注目されている。
同社株は、11月7日のMBO発表前の午前中から株価が値幅制限上限の30円高、103円まで上昇。結局、この日同社株はジャスダック上場率トップで取引も前週末比6倍の74万9000株に膨らんだ。仮にインサイダー取引があれば、確実に発見されるだけにシロ、クロに同社関係者は神経を尖らせている。
インサイダー取引規制とは、発行会社や公開買い付け等の関係者が重要事実を知って、公表前に株式の売買をすることを規制している。会社関係者というのは、役職員や帳簿閲覧権を持つ株主、監督官庁の職員、契約締結交渉に関与する弁護士等のほか1年以内にその会社に在籍していた関係者。
会社関係者から重要事実の伝達を受けた第一次情報受領者も対象になり、その受領者の家族、同僚も第一次情報受領者に含まれる。しかし、第一次情報受領者から情報を得た第二次情報受領者は対象外。もっとも、第二次受領者も共謀関係があれば立件される。
かつてNHKで発覚したインサイダー取引は、回転寿司チェーンと牛丼専門店の業務提携を知った記者(第一次情報受領者に当たる)が、別の部署の職員に漏らしその職員が発表前に当該株の取引を行ったもの。その職員は、同僚の記者から話を聞いており第一次情報受領者としてインサイダー取引規制で課徴金納付命令を受けた。
証券監視等取引委員会では、2009年6月から「コンプライアンスWAN」と呼ばれるシステムを稼動させ、証券会社から売買明細以外のデータ接受を可能にしており、証券監視委や財務局と証券取引所、日本証券業協会との間でデータのやり取りも行えるようにしている。証券監視委の職員数は10年度末で704人。
インサイダー取引が摘発されたある会社の特別調査委員会による調査報告書には、『借名取引であっても証券監視委の調査能力からすればインサイダー取引は必ず発覚することを周知徹底することが肝要である』と記されている。
発表前に急騰したカラカミ株の取引がインサイダーに当たるのかどうか、関係者は固唾を呑んで見守っている。