冬季札幌オリンピックの翌年、1973年に札幌・琴似で誕生した居酒屋「つぼ八」。現在は、東京都中央区に本社を置き全国241店舗を展開しているが、このほど大株主の日鉄住金物産(本社・東京都港区)が、持ち株の大半を「やまや(同・仙台市)・チムニー(同・東京都台東区)グループ」に売却することになった。(写真は、札幌市北区の「つぼ八」)
「つぼ八」は、紆余曲折があったものの、ルーツを辿れば日鉄住金物産は全国展開を始めた82年以来の大株主。居酒屋激戦の中、その大株主が酒類販売・外食事業に強みを持つ「やまや・チムニーグループ」に「つぼ八」の成長を託すことになった。「つぼ八」は創業から45年で新局面を迎えることになる。
札幌オリンピックで市街地整備が進み、地下鉄が通るようになった西区琴似。ここにあったパチンコ店2階の洋風居酒屋が「つぼ八」の出発点。わずか8坪の広さ、それを逆さにして「つぼ八」と命名したのは創業者石井誠二氏(その後、八百八町取締役などを務めた)だった。
当時の居酒屋の常識を破った低価格で鮮度の良い料理などが話題になり札幌で成功。82年に当時の総合商社イトマンと合弁を設立、全国展開を開始した。しかし、イトマンによる「つぼ八」乗っ取り事件などによって創業者の石井氏は解任されてしまう。イトマンは、当時の住友銀行が絡んだ絵画不正取引など商法違反事件も引き起こして93年には住友金属工業(当時)の専門商社、住金物産に吸収合併される。