北海道でサービス付高齢者向け住宅の需給環境が悪化している。この夏以降、新築のサ高住では入居率が30%台の物件も数多くあって、大手のサ高住運営法人は「初の苦戦を強いられている」と言う。業界によると今後5年くらいは“過剰供給→淘汰”が続くと見られており、サ高住も生き残り競争の時代に入った。(サ高住は淘汰の時代に入った=写真はイメージです。本文とは関係ありません。)
サ高住とは、介護、福祉と連携した高齢者を支援するサービスを提供する住宅で居室の広さ、設備、バリアフリーといったハード面に加えてケアの専門家による安否確認や生活相談サービスを提供することなどにより高齢者が安心して暮らせる環境を備えた住宅を指す。医療法人系や社会福祉法人系、一般企業がサ高住を建設しており札幌を中心とした道内の総戸数は約7500戸と言われている。さらに建設中の物件も多く、これらがすべて稼働すると総戸数は約1万戸の大台に達する。
過剰感が出てきたのは今夏から。道内最大手とされる運営法人が新築した物件も入居の申し込みが少なく初の苦戦を強いられているほか、別の運営法人が新設した物件も3分の1しか入居してない状況だという。
さる運営法人の代表者は、「今回建設したサ高住は2年くらいかけながらニーズ調査や費用負担の視点も考えて設計を何度となく変えてようやく完成した物件。こちらとしてはかなり力を入れたが、サ高住の供給がこれだけ増えるとさすがにスンナリ埋まらない」と話す。
ただ、この運営法人の物件は建物のハード面が良く共有スペースも多くあり、食事面でのサービスも充実していることから「そう遠くないうちに埋まっていくだろう」と見通している。もっとも、次のサ高住用地として確保した土地については別の利用を考えているそうだ。
サ高住に新規参入した法人などは、入居者確保のためにサービス面の充実を売りにするケースがあるが、それを信用して入居した利用者が実際とは違うために退去するケースも出てきている。また、特別養護老人ホームやグループホームに入居していた利用者が費用も安くてハード面が良いサ高住に入っても、結局認知症などの面倒は見られないと退去を要請される場合も起きている。一時的に入居者で満杯になっても2回転目に全く入ってこないケースも起き始めている。
前出の運営法人代表は、こう言う。「札幌は全国一の激戦区です。過剰になっているので部屋が埋まらず資金的に耐えられなくて手放すところが出てくるでしょう。その時には建設費の6~7割で手放すことになり力のある法人がそれを受け継ぐことで淘汰が進んで行くでしょう。今後5年間は一進一退の長期戦になり、体力のある法人とそうでない法人の格差が生じてくる」と話している。