株価は日経平均が1万円に届かず、証券市場は一進一退を繰り返しているが、個人投資家がそれに連れて減っているかというとそうでもないようだ。
札幌証券取引所が開催している個人投資家向け会社説明会「札証IR」には、毎回100人を超える個人投資家が集まってくる。投資意欲が衰えている訳ではなく、こういう時期だからこそ投資銘柄を吟味しようという姿勢が見えてくる。
札証が個人投資家向けに、札証上場企業のIRを始めたのは3年前。札証の活性化を図るためには個人投資家と札証上場企業との距離を縮めていくことが鍵になると判断したためだ。
最初のころは、無料であるにもかかわらず、なかなか参加者が集まらなかったが、最近は投資家同士の口コミでも広がって100人をコンスタントに超え、会場にしている札証2階の部屋は補助椅子を使って満杯状態。事前申し込みがなければ入ることが出来ないケースも出てきているという。
ほぼ2ヵ月に一度開催されており、道内企業や道外企業の社長や財務担当者が会社の経営状況を説明する。2社ずつそれぞれ1時間をかけて現状と今後の事業計画について話した後で参加者の質問を受け付けているが、「説明会なのに資料の中にBS(貸借対照表)とPL(損益計算書)がないのはおかしい」とか、「ドルとユーロの設定レートはいくらか?」など具体的な質問が多いのも特徴だ。
参加している個人投資家の中には、常連の参加者もいて札証の職員と気軽に声を掛け合う姿もある。
札証専務理事の定登さんは、「IRは1回だけでなく継続して実施することが大切。個人投資家と札証上場企業の橋渡し役をすることが出来れば良いと思っている」と言う。
東証への一極集中が進む中、東証との重複上場企業が札証上場を取りやめるなど札証の存廃論が燻っているのも事実。そうした中で、個人投資家の「札証ファン」を増やすことは投資家の裾野を広げることにもつながる。
京都や広島、新潟と相次いで地方証券取引所が閉鎖され、三大都市圏を除けば地方証取は「福岡」と「札幌」だけ。「札証」は市民との距離が近い普段着の証取として存在感を示して欲しい。
(写真は7月15日に行われた札証の個人投資家向け会社説明会)