コロナ禍で観光客が大きく減少している中、札幌市内では8月に入ってホテル開業が相次いでいる。当初の予定を延期していたホテルもオープンに踏み切るなど、利用客の回復が見通せない中で厳しい船出となっている。(写真は、「クインテッサホテル札幌すすきの」)

 国内のビジネスと観光を含めた新千歳空港利用客は、前年比30%程度という状況が続いており、国際線はゼロでインバウンド需要は蒸発したまま。札幌市内では、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった3月以降、新規ホテルの開業はなかったが、8月に入ってから開業に踏み切るホテルが増えている。

 1日にオープンしたのは、「クインテッサホテル札幌すすきの」(南6条西4丁目1ー2)、「ホテルフォルツァ札幌駅前」(北3条西2丁目1ー1)、「ONSEN RYOKAN 由縁 札幌」(北1条西7丁目)、 「ザ ノット札幌」(南3条西3丁目16ー2)の4ホテルで、8日には「フィーノホテル札幌大通」(南1条西6丁目8ー1)もオープンした。

「クインテッサホテル札幌すすきの」は、コアグローバルマネジメント(本社・東京都中央区)が運営するホテルで、札幌市内では「クインテッサホテル札幌」(南8条西5丁目)に続き2棟目。一面の銀世界を思わせるような真っ白なロビーが印象的で、冬の樹々をイメージした客室、夏の樹々の鼓動を感じさせるレストランなどが特徴的。客室数は155室、全室シモンズ社製ベッドを採用している。建物は京阪電鉄不動産(同・大阪市中央区)の所有。

(写真は、「ホテルフォルツァ札幌駅前」)

「ホテルフォルツァ札幌駅前」は、福岡地所(同・福岡市)のグループ会社、エフ・ジェイ ホテルズ(同・同)が運営する北海道初進出のホテル。内装デザインはフォルツァシリーズとして初めてカッシーナ・イクスシー(東京都港区)が手掛け、ラウンジは北海道らしい雪や氷に見立てたマテリアルを散りばめ、客室は4種類の雪をテーマにしたカラーでまとめている。髄所に北海道らしさが感じられ、これまでのフォルツァとは異なる表情のインテリアとなっている。客室はダブル161室、シングル111室、トリプル32室の計304室。

(写真は、「ONSEN RYOKAN 由縁 札幌」)

「ONSEN RYOKAN 由縁 札幌」は、「ホテルエルム札幌」跡に大京(本社・東京都千代田)と三信住建(同・東京都中央区)が建築主になって建設したもので、運営はUDS(本社・東京都渋谷区)が行う。同社は2019年5月に東京・新宿に「ONSEN RYOKAN 由縁 新宿」を開業しており、このシリーズの2棟目。日本特有の丁寧な様式やしつらえを継承・編集しながらナラやニレなどの北海道の木材と札幌軟石をデザインに取り入れ、北海道、札幌の歴史や文化に触れながら滞在できる。2階の大浴場には、湯治場として人気のある登別市カルルス温泉の源泉から運んでくる湯を利用している。客室数は182室。

(写真は、『ザ ノット札幌』をバックに手を寄せる関係者。左から和食ミシュランスターシェフ三枝展正氏、セコマ・丸谷智保会長、いちご・石原実副社長、千秋庵製菓・庭山修子社長、ABアコモ・阿部裕二社長)

「ザ ノット札幌」は、旧札幌千秋庵本店ビル跡地に、いちご(本社・東京都千代田区)と千秋庵製菓(同・札幌市中央区)が共同で建設したライフスタイルホテル。当初は4月オープンを目指していたが、コロナで資材調達が遅れたことなどから4ヵ月遅れのオープンになった。従来のホテルの概念にとらわれない新しい時代に求められる施設づくり、サービスの提供を目指している。「大自然の大都会で」をテーマにしており、2階フロントには道南杉や札幌軟石を使用、外壁の一部には江別産レンガタイルを利用した。1階には千秋庵製菓「札幌本店」とセコマ(同・札幌市中央区)の「セイコーマート ザ ノット札幌店」が入っている。客室数は140室、運営はABアコモ(同・東京都千代田区)。

(写真は、「フィーノホテル札幌大通」)

「フィーノホテル札幌大通」は、当初は7月に「ベストウェスタンホテルフィーノ札幌」としてオープンを進めていたが、コロナ禍のために開業を延期、8日に新ブランド「フィーノホテル」の1号店「フィーノホテル札幌大通」としてオープンした。運営は価値開発(同・東京都千代田区)グループのフィーノホテルズ(同・同)が担う。全145室で、シモンズ社製ベッドや空気清浄機、無線LAN(WiーFi)などを全室に完備。館内は温かみのある内装で落ち着いた雰囲気が特徴。客室はセミダブル・ダブル2タイプ・ツイン・フォースの5タイプがある。フィーノホテルズは、道内で「ベストウェスタン札幌大通公園」(中央区大通西8丁目2ー36)、「ベストウェスタンプラスホテルフィーノ千歳」(千歳市)を運営している。
 オープンした5ホテルの客室総数は926室で、8月以降も新規オープンが続く見通し。需要減の環境で供給は止まらず、ミスマッチの拡大に拍車がかかりそうだ。



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