ーー国や道の復興、復旧に向けた動きも非常に早かったのが印象的です。
柴田 国も道も市も一枚岩になって、動きは早かった。特に札幌市の場合は被災地でもあったため、観光だけの問題ではないということもありましたが、動きは早かった。北海道はこれまで観光が非常に好調で、地域経済の牽引役にしていこうとしていましたから、震災で関係者の多くが非常に危機感を持った。それが危機打開に向けて一枚岩になれた原因ではないかと思っています。
ーー震災を通じて課題はありましたか?
柴田 様々ありますが、観光案内所のBCP(事業継続計画)対応もその一つです。震災当日は、観光案内所の防火シャッターが停電で開かず営業できなかった。翌日から職員が出勤の時間を遅らせて開館しました。ハードの整備はお金を掛ければできますが、炊き出しの食事はどこで出しているか、どこで観光客を受け入れているかなど、今回はソフト面で行政との連携に課題を残しました。そうしたソフト面は、ハード整備よりはるかに大事なことで、これは連携していくしかありません。そういうところをしっかりとやっていけば、まだまだ北海道観光には札幌も含めて伸びしろがあると思います。
私は、北海道全体で見ると札幌が拠点として牽引していくことが非常に重要だと思います。特に従来と違うのは、インバウンドが急増していること。もちろん北海道ブランドがインバウンドを引き寄せているのですが、札幌はその拠点であり、一つのショーウインドウの機能を持っています。情報も含めてしっかりと機能をパワーアップして、全道の観光を引っ張っていく必要がある。
札観協は、札幌だけを考えて活動することにはならないと思います。協会内部でいろいろ議論している中に、『連携』というキーワードがありますが、これは各地の観光協会との連携のことです。広域観光が非常に重要なテーマになっていますから。
どんなビジネスでもユーザー目線が大事なように、観光には観光客目線、来る人たちの目線が大事です。当たり前ですが北海道、札幌に来る観光客が何を欲しているのか、何のために来ているのかなどをしっかり把握することが鍵を握ります。これまでのアンケートで、景色が良いとか、食事が美味しいとか、北海道の魅力にはいくつかあると思いますが、こうしたニーズも多様性があります。来られる方にはお子さんもいれば、おじいちゃん、おばあちゃんもいる。そういう観光客の多様性、ダイバーシティ的なものに応えることも必要だと思っています。札幌は北海道観光のショーウインドウということからいうと、多様性のエキスは札幌でしっかり育てていくのが非常に重要だと思っています。
ーー自治体や関係組織と連携して一体になって取り組むことが大切だと。
柴田 全体でいうとマーケティング力はまだまだ課題があります。この背景には、ここ数年で急増しているインバウンドがあります。日本全国そうですが、特に北海道、札幌を含めてまだまだじっくりというか、しっかりしたマーケティングが実践されているとは言えない状況です。おそらくそれぞれの感覚で、様々に対応しているのが実情でしょう。ナイトエコノミーという夜の観光も課題の一つです。
海外の方から『夜がつまらない』という話を聞いたことがあります。夜はホテルに帰って寝るだけという感じですから、一度にはできないにしても海外の観光客から話を聞きながら、少しずつプランニングしてロードマップを策定しつつニーズに合った形でやっていければと考えます。
札観協は、羊ヶ丘展望台も運営していますし、大通公園のイベントとして雪まつりから始まり四季を通して様々な行事を手掛けています。それらとどう組み合わせていくか、バランスを取りながら実施していくのが課題だと思っています。