北海道と沖縄が、観光や地方創生で連携し合うことを目的に発足した「どさんこしまんちゅプロジェクト」。19日に札幌市内で開催された1回目のフォーラムでは、旅行ガイド本などを出版している石井兄弟社(東京都港区)の代表取締役石井至氏が『2020年に4000万人!北海道と沖縄がインバウンドで稼ぐ方法』をテーマに基調講演を行った。石井氏は、1965年札幌生まれで東京大学医学部卒。金融機関勤務を経て現職。『明日の日本を支える観光ビジョン構想会議』委員や北海道のIRに関する有識者懇談会委員なども務める。以下、石井氏の講演要旨を紹介する。(写真は、基調講演をする石井至氏)

「インバウンド観光は、ここ5~6年で一大ブームになっており、地方ではインバウンドを取り込んで儲けることが必要になっている。これまで地方の役所の観光課は、例年の祭りの実施をつつがなく行うことが仕事だったが、今はそうではなく国内外から積極的にお客を呼んでくる“誘客”をしなければならない。観光の仕事が大きく変わってきた」

「どこの地方でも観光業界にはドンがいる。そのドンは今までの国内旅行では長けているが、インバウンドは詳しくない。自分の成功体験でやってもうまくいかないのはよく聞く話。インバウンド観光には、お国柄があって中国人とタイ人では好きなことや食事、買い物の傾向などが全然違う。同じ中国人でも買うものがどんどん変わっていくのが昨今の状況だ」

「金融機関に勤めていたので、観光とは全く関係がなかった。観光に携わったのは、7~8年前。それは、カリブ海を旅行していたら、『地球の歩き方』というガイド本が間違っていることに気づいたから。私の方が詳しいと思って旅行ガイドの出版を始めたのがきっかけ」

「日本でインバウンドが増えている理由を、はっきり答えられる人はあまりいない。為替とビザ緩和が要因という人もいる。確かに為替で勢いがついたが、それだけではない。ビザ緩和によるインバウンドも、6割の国は増えたが4割の国は逆に減っている。どうしてインバウンドが来ているかというと、日本は世界最先端のセグメント化したマーケティングを本格的に導入しているから。その要因が大きい」

「アルバニアから観光振興を頼まれた際、国旗が仮面ライダーのショッカーのマークに似ているから、“ショッカーの故郷アルバニア”として売り出してはどうかと提案したが却下されたことがある。また、ベラルーシでは、ケネディ暗殺犯とされたオズワルドが住んでいた家を観光で売り出したらどうかと提案したこともある。
 さらに、登別市の観光担当者からフィリピン人観光客を呼ぶために助言を求められ、日本から輸出されたアニメ、『超電磁マシーン ボルテスV』を使うことを提案したこともある。いずれもうまくいかなかったが、現地の人が何とも思っていないものも資源になりうる。いずれにしても、インバウンドを増やすためには勝ちパターンがあって、その方程式通りにやれば増える。ある意味、方程式通りにやっているから日本はインバウンドが増えている」

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