日本のホテル御三家で唯一札幌に進出していなかった帝国ホテルが、2014年に開業する。三井不動産が、道庁東側に建設を予定している高層ビルの中核テナントとして入居するもので、札幌にはない高級ホテル市場を開拓するとホテル関係者から期待されている。
札幌のホテル市場は、全国的にも珍しい環境に置かれている。オンシーズンとオフシーズンの利用客の落差が激しく、オフシーズンになると客室稼働率は激減するからだ。全国の主要都市やリゾート地を見渡しても、これほどの落差のある土地柄は他にはない。
ホテル関係者は、「津軽海峡が札幌のホテル市場の宿命を形作った。つまり、キャリアとエージェントに支配される構図だ。札幌のホテルは、キャリアとエージェントに頼らなければ生きていけない。勢い、格安旅行を受け入れざるを得ないから、札幌市内のホテルで利益を出せるところは数少ない」と言う。
札幌のホテルではラックレートと呼ばれる正規料金は殆ど用をなしていない。ダンピング価格は常態化しており、各ホテルともおかしいと思いつつも、デフレ価格で集客せざるを得ない。この状況は、もう数十年続いており、過去何度もこの泥沼を抜け出す努力が行われたが、結局元の木阿弥になってしまっていた。
そこへ進出する帝国ホテルには札幌のホテル関係者の熱い眼差しが注がれている。一般的な感覚なら、新たなホテル進出は一層の価格低迷と顧客争奪を引き起こすとして忌避されるが、帝国ホテルはむしろ歓迎されている。
「札幌には1泊4~5万円を取れるホテルがない。帝国ホテルが国内外の富裕層を呼び込むことになれば、既存ホテルもアッパー価格に応じたサービスを提供するようになって、相対的に価格上昇トレンドが生まれてくる」(札幌市内ホテル関係者)
帝国ホテルの札幌進出は、札幌ホテル業界に高級市場を開くとともに、新たなサービスとホスピタリティを提供するきっかけとなり、札幌のホテル業界を価格重視から価値重視に転換させる救世主になると期待されているわけだ。