札幌市内の食品スーパーが、ディスカウント(DS)路線を強化している。チラシ販促の強化、ポイント倍率アップ、さらにDSのハード化が加わって利益の希薄化が進んでいる。こうしたDS路線と一線を画すのがダイイチ(帯広市)。鈴木達雄副社長に聞いた。(写真はダイイチ八軒店)
 
――札幌市内の食品スーパーはDS路線を突き進んでいる。
 
鈴木 当社は2004年7月に八軒店を出店して札幌に進出したが、この7年間で当時と比べてDS店が相当の勢いで増えている。価格競争は一段と厳しくなり、商圏マーケットも当初よりも狭くなっている。価格重視のマーケットは、当社も8店舗を展開している旭川に近くなってきた。
 
――食品スーパーのDS化をどう見ているか。
 
鈴木 DSにはお客様の支持がある。それだけニーズに応えている訳で、価格戦略は避けて通れない。ただ、当社は価格ばかりではいけないと考えている。DS化によって社員教育が疎かになると危惧しているからだ。社員教育は商いの背骨だと思う。商いの背骨を作っていくことが大切だと考えている。
 
――DS路線では社員の成長が見込めないということか。
 
鈴木 そうではない。DSでは仕入れ担当者は成長するだろう。しかし、店頭で販売している担当者は果たして成長できるのかという疑問がある。DSの店頭では、どうしても安くなければ、という発想に重きを置くようになる。そうすると、鮮度、美味しさ、陳列のことは後回しになってしまう。
 
――つまり、DSでは店頭の現場力が育ちにくくなるということか。
 
鈴木 DS路線は個別店舗のオペレーションよりも、本部の意向による受身的なオペレーションが優先してしまう。受身の姿勢の中からは、なかなか創造性というものが生まれてこないのではないか。少なくとも当社は、右脳から生まれてくる創造性を店頭という現場で教育するなりしていきたいと考えている。現場で働いていく中でパートを含めて社員が成長し、それをもう一歩進化させて個別の店づくりにフィードバックさせていければ良いと考えている。
 
――アークスやコープさっぽろのように、食品スーパーはグループ化や大規模化を指向する流れがある。中小規模のローカル単独スーパーが生き残る道は?
 
鈴木 アークスやコープさっぽろのように大きいことのメリットはある。マス化した食品スーパーは、仕入れやMD(マーチャンダイジング)に力点を置いてコストを低減しDS化を進めている。つまり、入り口戦略を重視しているということだ。しかし、我々のような規模の食品スーパーでは、入り口よりも店頭でお客様と接する出口の戦略を重視しなければならない。惣菜や鮮魚、精肉、野菜類の品質、ノントレーの採用などエコにも気を配って、何よりお客様が喜ぶことをサービスとして展開していく“出口戦略”が生き残りの鍵と見ている。
 
 それが通用しないからと言って、当社がDSになることはない。お客様に喜ばれるにはどうしたらいいかを常に考える食品スーパーを目指す。


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