胆振管内安平町のゴルフ場「ANAダイヤモンドゴルフクラブ」が6月末に明治海運グループに売却されることになったが、一部会員から不満の声が強まっている。と、いうのも会員らが納めた預託金100万円は返却されるものの、入会金25万円は戻ってこないためだ。昨年から今年にかけて新規会員になった会員らは、クラブの一方的な売却に説明責任を問う声が上がっている。
ANAダイヤモンドゴルフクラブは、1988年に全日空と三菱マテリアルが折半出資で設立した36ホールのゴルフコース。全日空が道内で初めて手がけたコースでブランド力もあって道外ツアー客を中心に利用客が多かった。
バブル崩壊以降は長期低迷状態で、預託金償還期には会員権の分割と償還希望の会員には預託金を返還する施策で延命を図っていた。
しかし、会員数が激減したために月例会なども開けない事態になったため、数年前から会員権100万円、入会金25万円の計125万円で新規募集を始めていた。
売却話は昨年から水面下で進められ、一時は中国系資本の取得も取り沙汰されたが、結果的に今年4月1日付けで明治海運グループの不動産管理会社、明海興産が取得する契約を結んだ。
売却額は3~5億円と見られているが、「毎年赤字を計上していたコース。5億円ではペイできないからおそらく3億円前後」(ゴルフ場関係者)とされている。
この売却に異議を唱えているのが、昨年や今年に会員権を購入したメンバーたち。
「いきなり明海興産に売却するという通知が来て、預託金を返すから文句ないだろう、というような文面。1年前から売却交渉をしていたのにそれを隠して入会金まで取っていたのはANAと三菱のブランドが泣く。
会員権と入会金を合わせた125万円のうち100万円だけを返すから25万円は我慢しろという一方的なやり方は納得できない」(会員)
法的整理なら会員らも入会金返還を諦めざるを得ないが、今回は任意売却で会員権価格の4分の1にもなる入会金を反故にする合理的理由はANAと三菱側には見出せない。
ANAと明治海運は、資本的な結びつきはないものの、ANAの中興の祖と言われる若狭得次氏の娘が明治海運トッブに嫁いでいる関係から両社は密接な関係。昨年初めには稚内全日空ホテルの運営権が明治海運グループの明海興産に売却されたこともある。
明海興産は6月末にANAダイヤモンドを取得し、その後はパブリックコースに変更される。「メンバーコースでさえ四苦八苦していた経営が、パブリックになったらもっと厳しくなるのではないか。明海興産はいずれこのコースを売却するつもりではないのか」という声も上がっている。
ところで、ANAとJALのエアー2社が道内に所有していたゴルフ場は、今回のANAダイヤモンドとJALの苫小牧ゴルフ倶楽部ブルックスコース、フォレスト旭川カントリークラブ(旧JAS)の3コースがあったがいずれも売却され、これでエアーが持つゴルフ場は道内でゼロになった。