稚内信用金庫(本店・稚内市)は2026年7月28日、信用金庫業界のセーフティネットである信金中央金庫(本店・東京都千代田区)の経営力強化制度活用による資本増強を申請したと発表した。金利上昇によって保有する国債の含み損が拡大、財務の悪化を解消するためで、信金中金の支援額は200億円規模とみられる。
(写真は、稚内信金本店)
稚内信金は、<市場金利上昇に伴い、保有有価証券評価損が拡大しました。しかしながら、この評価損のほぼ全ては満期時に全額償還される安全性の高い日本国債によるものであり、当金庫の業務運営等に支障を及ぼすものではございません>としている。続けて、<当金庫の業績は順調に推移しているほか、長年に亘る内部留保の蓄積により、高い自己資本比率(2026年3月末64・43%)を確保しております>と金庫業務に影響はなく、預金や融資は通常通り行えることを強調している。
稚内信金は、預金が順調に積み上がりつつも、地域経済の縮小で貸し出し先が少なく、預金量のうちどれだけ貸し出しに回しているかを示す預貸率は、道内20金庫平均を大きく下回る状態が恒常的に続いている。2026年3月期では、平残(平均残高)の20金庫平均が40・67%だったが、稚内信金は16・21%だった。貸し出しに回せなかった資金は、信金中金への預け入れや有価証券運用に回さざるを得ない経営構造がある。
稚内信金の有価証券運用は、国債や地方債などに限定しており、株式運用は行っていない。以前は株式運用も行っていたが、バブル崩壊による株価下落の寸前に全株式を売却、危機を脱した経験から安全運用に切り替えたためだ。2026年3月期で国債の含み損を抱える道内金庫の中には、大地みらい信用金庫(本店・根室市)のように、株式の売却益で国債の含み損を解消する金庫もあった。ただ、株式の運用は一定のリスクを伴うため、道内金庫の中でも数金庫にとどまり、大半は国債が中心。稚内信金と同様に含み損を解消できず、抱え込んでいる金庫は多いとみられる。
国債の含み損をどのタイミングで解消するかは、決断が必要だ。2025年3月期には道南うみ街信金(本店・桧山郡江差町)は100億円の損切りを行い、最終赤字を計上した。自己資本を毀損しないぎりぎりのタイミングだった。毎年3月期の決算時期になると、業界では各金庫の理事長交代が話題になるが、稚内信金の理事長も在任20年になることから、交代の可能性が囁かれていた。蓋を開けると続投だったが、そこには今回の資本増強申請という伏線があったのかもしれない。


































