相次ぐ「メニュー偽装」が問いかける「働くことの意味」

社会・文化

P1060616 ホテルやレストランでメニューと異なる食材が使われていたメニュー偽装問題は、そこで働く人の意識が如何にその組織に縛られているかを見せつける結果になった。「伝統」や「ブランド」という名の下に続けられてきた負の慣習に疑問を感じつつも声を上げず改善に体を張る組織人がいなかったことにこそ驚きを感じる。そして阪神・阪急ホテルズに端を発したこの問題に後出しジャンケンよろしく、ここぞとばかりに公表を連発する経営者たち。「再生」には組織の風土を根本から議論する土壌づくりが欠かせない。(写真は、メニュー偽装が行われていた札幌グランドホテル)
 
 メニュー偽装は、食の宝庫、北海道でも日常的に繰り返されていた。道民の誇りでもあった老舗ホテルの札幌グランドホテルと札幌パークホテルでは牛脂注入肉を牛肉ステーキと表示したりアカニシ貝をアワビ、人工フカヒレをフカヒレスープに加えたりしていた。もっと酷いのは外国産のアサリや豚肉、小麦を道産と表示するなど北海道のブランド力を自ら傷つける行為にまで手を染めていたことだ。
 
 両ホテルを経営するグランビスタホテル&リゾートは、「本社総務部が把握していなかった」、「産地を特定して食材発注するべきところを食材のみで発注していたため他産地のものが納品された」、「調理上の理由で食材を変更していた」と弁明。さらに驚くことにメニュー作成時には本物を使っていたが、その後代用品に代わり料理長や発注担当の異動で代用品がそのまま使われていたなどしていることだ。
 
 ホテルやレストランの料理長や担当者は食の専門家であるはずだ。偽物と本物の区別ができないわけはないし、お客様に視線が届いていればメニューにも気を配るのは当然。それをしてこなかったことは、伝統やブランドに組織人が如何に縛られるかを示している。
 
 不正を正す言動を封じ込めてしまうような組織の風土は不健全だ。そんな組織の殻を破ろうとする組織人を異端視する職場も歪んでいる。「メニュー偽装」は、働くことの意味を問いかけている。

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