北海道の観光土産品市場を牽引した井上俊彌氏(HPI創業者)逝く

経済総合

 観光土産品卸、HPI(北海道プロダクツイノベーション、本社・札幌市白石区)の創業者で、2014年5月から安孫子建雄現理事長にバトンタッチする、2021年5月まで札幌学院大学理事長を務めた井上俊彌氏が2025年4月23日、入院加療中のところ、上腸間膜動脈閉塞のため逝去した。享年94歳。妻の節子さんが喪主を務め、札幌市豊平区の札幌斎場で、社葬にて同年4月28日に、通夜が行われた。(井上氏は、黎明期から今日に至る道内土産品市場を形づくってきた立役者の一人だった=写真)

 井上氏は、1931年生まれ、小樽市出身。1953年に現在の札幌学院大学の前身、札幌短期大学第一部商業科を卒業、同年三馬ゴム入社。1963年北邦に入社し、1969年に土産品卸の井上商事を起業。1976年道内土産品卸の最大手、北海道観光物産興社(本社・札幌市白石区)と合併し、1981年に同社社長に就任した。

 当時の観光土産品と言えば、熊の木彫りなど非食品が主力だったが、菓子や食品の土産に着目したのが、井上氏。井上商事と北海道観光物産興社が合併した1976年は、北海道土産として定着している石屋製菓(本社・札幌市西区)の「白い恋人」が、産声をあげた年でもある。井上氏は、観光土産品問屋として、「白い恋人」の販路拡大に尽力したことでも知られる。

 それからおよそ20年後、北海道観光物産興社が売上高100億円に達する頃、井上氏は、同社役員の刷新に取り組んだ。同社は、北海道の観光土産品市場の取りまとめ役になる会社を設けようと、複数の企業や個人株主による共同出資で1960年に設立された、いわば寄り合い所帯。出資者の中には、競合する観光土産品問屋もあった。そういった成り立ちから、社外取締役なども出資者から選任されてきた上、北海道観光物産興社の社内情報も出資各社に共有され、独自の戦略が描けない状況だった。

 そこで、井上氏は、役員刷新の大ナタを振るおうとしたが、株主などからの猛反発で逆に追放される立場になってしまった。結果、北海道観光物産興社を離れ、新たな観光土産品卸としてHPIを2002年に設立。この時、井上氏を慕い、北海道観光物産興社の一線級社員の多くがHPIに移籍した。井上氏は、2014年には、かつて学んだ大学の理事長にも就任、大学経営も経験した。食と観光は、北海道の基幹産業。その二つの柱を触媒のように繋ぐのが、観光土産品。井上氏は、観光土産品市場の黎明期から今日までの礎を築いてきた一人だった。

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