一世を風靡した「リトルスプーン」がレトルトで復活、リアル店舗を望む声も

経済総合

 2024年1月9日、X(旧Twitter)の「北海道どさんこプラザ【公式】アカウント」から「このキャラクター知ってますか?」と発信された。玉ねぎのような髪型で、カレーライスを持った子どものキャラ。公開からほどなく、SNS上では「リトルスプーン」という言葉がトレンドになった。閲覧数は今年2月末時点まで、およそ36万。コメントには「懐かしい」、「おいしかった」といった言葉が溢れた。(画像は、SNSで発信された「リトルスプーン」のキャラクター)
(画像は、「リトルスプーン」北海道熟成カレー)

「リトルスプーン」とは何か。地元の「みよしの」や道外の「CoCo壱番屋」などがひしめき合う、北海道のカレーチェーン店市場において、1999年の初出店以降、一大旋風を巻き起こして急成長したカレーブランド。「北海道どさんこプラザ【公式】アカウント」があげたのは、そのイメージキャラクター「スプーンちゃん」だった。SNSで発信したのは、「リトルスプーン」のカレーがレトルトになって復活、販売を開始したことを告知するため。

 今回の告知で「リトルスプーン」がバズったのは、このカレーチェーンが既に閉店していたことが、大きな理由の一つ。“道民が好きな味のルゥカレー”をコンセプトに、玉ねぎをたっぷり使って独特のトロトロ感や甘みと辛さの調和が特長だった「リトルスプーン」。種類豊富でボリュームのあるトッピングも好評だった。札幌はもとより道内各地、道外、海外(上海に1店舗)にも出店、最盛期には、60店舗以上を展開するほどだった。

 しかし勢いは長続きせず、2007年に創業企業のオーヴが「リトルスプーン」をコンバージョンに譲渡。しかし、コンバージョンは、その後の食材価格高騰や競争激化で資金繰りが悪化、2009年に自己破産。以降、他の会社が店舗運営を引き継いだが軌道に乗らず、2012年までに全店舗が姿を消した。

 それから10年以上も経って「リトルスプーン」が、今回レトルト商品として復活したのは、カレールゥを作る工場や設備、レシピがしっかりと残されていたため。現在、この商品を製造をしているのは、エムフローズン(本社・札幌市東区)。同社は、外食産業やさまざまな施設の調理を一手に引き受けるセントラルキッチン事業者。「リトルスプーン」のカレーも、冷凍商品としてコープさっぽろの宅配サービス・トドックなどに向けて、これまでも販売してきたほか、「ルーシー店」など一部店舗販売も行なっている。

 冷凍商品としては、以前から復活していたのだが、今回のような、常温販売できるレトルト商品の登場は、ブランドが消滅してから初めて。SNSのトレンドワードにもあがったものの、「北海道どさんこプラザ【公式】アカウント」運営側で同品担当の北海道百科(本社・札幌市中央区)営業本部商品企画の中村健人バイヤーによると「SNSでは大変盛り上がったのですが、売れ行き自体は正直なところ思ったほどでは……」とこぼす。 

 大きな理由は、販売店舗が北海道どさんこプラザの新宿店・池袋店・吉祥寺店・さいたま新都心店・仙台店・名古屋店・町田店・海老名店と道外に限られ、「リトルスプーン」と最も馴染み深い北海道では、販売されていないため。

 北海道どさんこプラザは、もちろん道内にもあるが、運営会社が本州と北海道では違うことなどが原因で、今のところ道内販売はされていないが、着々と準備は進んでいる。北海道で「リトルスプーン」の味を求める人は、本州よりも圧倒的に多い。もちろん、レトルト販売だけでなく、リアル店舗の復活を望む道民の声もある。エムフローズンをはじめ販売関係者には、ぜひこうした声を受け止めてほしい。

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