エスコンで体験した小さな夏

社会・文化

 指先に止まったトンボは、なかなか離れようとしなかった。新球場エスコンフィールド北海道。その屋根が開いた日に、舞い降りてきたのが、このトンボ。新球場の何万人という観客の中から、この指を選んで止まった。夏真っ盛りの北海道、エスコンで体験した夏は、小さな感動を運んでくれた。

 エスコンの屋根は、スライドしながらゆっくりと開く。全開するまでに必要な時間は、25分。北海道の空が徐々に広がり始め、やがてエスコン一面に夏の陽光が振り注ぐ。屋根がある時と比べると、開放感は桁違いに高まる。
 
 真夏日のその日もエスコンの屋根が開き、北海道にしては強い日差しが球場内に入ってきた。試合が始まる前、観客が思い思いの時間を過ごしている時、近くを飛ぶトンボを見つけ、指を立ててみるとトンボが止まった。30秒、1分、なかなか飛び立とうとしない。振りほどくようにしてトンボを離すまでに2分近くが経っていた。

 指先にトンボが止まっている様子を見た隣の親子が、「あら」と小さな声を上げた。指先の向こうには天然芝が広がっていた。折しもエスコンでは、試合の前後も楽しめる「超夏祭り」と銘打った企画が始まっている。大掛かりに催されるイベントと対照的に、指先のトンボは小さな夏を体験させてくれた。日ハムがエスコンを作りたかった理由が、少し分かったような気がした。

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