「北海道百年記念塔を守る会」の野地秀一代表ほか85人が、道による百年記念塔(札幌市厚別区野幌森林公園内)の解体工事の差し止めを求めた行政訴訟の判決が、3月28日札幌地裁805号法廷であった。谷口哲也裁判長は、訴訟の原告適格がないとして却下、いわゆる門前払いの判決となった。解体撤去の差し止め仮処分の申し立ても同時に却下された。原告側は、2つの訴訟について控訴する方針。(写真は、札幌地裁に向かう「北海道百年記念塔を守る会」のメンバー)
(写真は、判決後の報告会で話す原洋司弁護士)
805号法廷は、注目度が高い刑事、民事の判決が下される場合によく利用される法廷。この日は、13時前に原告団のメンバーが「百年記念塔を守ろう」と書かれた横断幕を持って裁判所前に登場。原告団の一人で百年記念塔の設計者だった故・井口健氏の遺影も掲げられた。傍聴席は69席が全て埋まり、裁判が始まる14時前、2分間のテレビの代表撮影が入るなど、注目度の高さがうかがえた。
開廷後に谷口裁判長が「棄却」を伝えると、法廷内は一層静けさが増し、5分ほどで閉廷となった。原告側の原洋司弁護士は、「百年記念塔は重要な歴史的、精神的価値を持っており、解体が道民の利益を抑圧する処分行為に当たる」と訴え、道側の藤田三津夫弁護士は、「解体が道民の権利義務に影響を及ぼす処分性はない」と主張していた。
谷口裁判長は、「百年記念塔を通じて醸成された何らかの価値が、仮に損なわれるとしても解体撤去されることによって生じる反射的、間接的な影響であって、解体が北海道の住民の権利義務に直接影響するとは言えない」と判断した。
判決後にロイトン札幌で行われた報告会で、原弁護士は、「(百年記念塔存続の)利益があるのだから、それを壊したり解体することに対しては処分性があると主張したが、受け入れられなかった。一言でいえば旧態依然たる判決。鞆の浦景観訴訟のように、住民が関わる利益を具体的に検討せず、提起した問題に対して真正面から答えていない。面倒くさいものを振り払うような判決だ」と話した。
訴訟団の野地代表は、「多くの方々の傍聴で力強い声援をいただいた。残念ながら却下され、驚きとともに残念な気持ちでいっぱいだ。百年記念塔は道民の宝であり、なくなってしまうと歴史は帰ってこないという思いに変わりはない。控訴して、引き続き活動を続けていくので支援をお願いしたい」と述べた。
原弁護士は、「判決では、〈百年記念塔を解体するにあたって、原告らが主張する住民自治の権利や利益に具体的に配慮することを義務付けているとは言えない〉としているが、地方自治法は細かく地方財産の規定を設けている。公の営造物など住民のために使わなければならないものについての権利を認めている。そういうことについて詳しく、系統立てて訴えを再構成していきたい」と語った。原告団は、野地代表を含め86人全員の委任を取り付け、期限の2週間以内に控訴する考え。