岩見沢農業高校と北海道大学、北海道立総合研究機構は、プラチナ触媒を利用した切り花の鮮度保持研究を共同で実施することになった。岩見沢市は花きの一大生産地。高・大・研究機関連携で研究を進め、地元で生産される切り花の鮮度を維持したまま流通できるように実用化を目指す。プラチナ触媒の普及に向けた高・大・研究機関連携は、今回が初めて。※動画はこちらの画像↓をクリックしてご覧ください。
(写真は、岩見沢農高、北大、道総研のプラチナ触媒を用いた切り花流通の鮮度保持共同プロジェクト記者発表)
プラチナ触媒は、北大触媒科学研究所の福岡淳教授が、2013年に開発したもので0℃程度の低温環境下でも野菜や果物が自ら発生させて熟成、腐敗に影響するエチレンガスを分解することができる触媒。既に家庭用冷蔵庫にこの触媒が搭載され、家庭で使う野菜や果物の鮮度保持に利用されている。
しかし、プラチナ触媒の広範な利用がなかなか進まないことを受け、2020年に北大、北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)、道総研、セコマグループが中心になって「フードロス削減コンソーシアム」を設立、食品の生産、流通、小売りのサプライチェーンでプラチナ触媒を使った鮮度保持を進めることでフードロス削減に結びつける取り組みを進めている。その活動の一環として、2021年度に高校生や高専生を対象に「フードロス削減アイデアコンテスト」を実施、岩見沢農高生物科学科のプラチナ触媒を切り花流通に利用する研究が、北海道知事賞に選ばれた。
この研究を引き続き行うため、このほど北大、道総研と高・大・研究機関連携による共同プロジェクトを組むことになった。岩見沢農高は栽培しているアルストロメリア、ガーベラ、トルコキキョウを対象に、プラチナ触媒1gと10gを使った実験データの採取と分析、商品化の企画立案を行う。北大はプラチナ触媒の提供と使用方法の指導、道総研は試験方法や商品化への助言、指導を行う。
8月29日に岩見沢農高で共同研究プロジェクトの記者会見が行われ、北大の福岡教授は「昨年度の岩見沢農高の取り組みが、素晴らしいものだったので、今回はこちらから共同研究の提案をした。高校、大学、道立の研究機構が一緒に研究を進めることで新しい成果が生まれてくれば良いと思う」と話した。道総研工業試験場材料技術部の野村隆文部長は、「北海道最大の花の生産地、空知地区からプラチナ触媒を活用した鮮度保持の専門的技術が発信されることは意義深い。課題はあるが、早期に実用化を目指したい」と述べた。
岩見沢農高生活科学科2年の生徒は、「今回の実験が成功して、切り花流通の助けになればうれしい。鮮度の高い切り花を日本中、世界中に流通させたい」と意欲を語った。フードロス削減コンソーシアムの幹事を務めるセコマの丸谷智保会長は、「セイコーマートでは年間30万束の切り花を販売しているが、札幌から稚内、利尻・礼文など長い距離を運ぶこともある。この間に、つぼみが開いてい劣化してしまうこともある。今回の共同研究は、学習だけでなく実践の成果に結びつく可能性が高い」と期待感を示した。
現在、切り花の鮮度保持には銀の錯体が利用されているが、鮮度保持効果や使い捨てなど課題がある。プラチナ触媒を利用した鮮度保持効果の実証データが確認されれば、通い箱(拠点間を行き来して商品を輸送する箱)での利用などSDGsに繋がる効果も期待できる。