壺屋総本店・村本暁宣社長インタビュー「ときの杜 買物公園店の狙いと今後の成長戦略」

経済総合

 創業92年、旭川の老舗菓子店である壺屋総本店(本社・旭川市忠和5条6丁目5-3)が、平和通買物公園に新店舗「壺屋 ときの杜 買物公園店」(同市1条通8丁目187-1)をオープンさせた。このほど竣工した「ツルハ旭川中央ビル」1階にテナント出店したものだが、「壺屋」にとっては25年ぶりの買物公園への再出店になる。新店舗では、新たなブランド「potea(ポティー)」を展開、「壺屋」の既存商品とともに世代間の架け橋となる店舗を目指す。壺屋総本店の村本暁宣社長(48)に「ときの杜」の意義と役割、今後の成長戦略などを聞いた。(むらもと・あきのり)…1973年7月旭川市生まれ、48歳。1996年石巻専修大学卒業、1997年4月から2002年1月たねやで修業、2002年2月から2009年1月壺屋総本店常務、2009年2月から2021年1月代表取締役専務、2021年2月から5代目の代表取締役社長。

 ーー平和通買物公園に「壺屋」が戻ってきましたね。

 村本 本店は、かつて平和通買物公園の近くにあったので、今度の新店舗「ときの杜 買物公園店」は、25年ぶりに買物公園に戻ってきたことになります。買物公園は、旭川中心部なので交通の便が良く、バスやJRで病院に通うためなど、午前中に年配の方が多く行き交います。午後3時くらいになると、中高校生や20代前半の若者たちが増えてきます。昼の顔と夕方の顔が全然違うのが、買物公園の特徴です。世代が交差するエリアで、そのスポットに「壺屋」の現在、過去、未来を体感できる店舗として出店したのが「ときの杜」です。
 高校生たちは、「壺屋」のことをあまり知らないかもしれないし、「壺もなか」や「焼き菓子」も買わないかもしれません。何を買っているのかというと、1ヵ月に1回なのか分かりませんが、「スターバックスコーヒー」に行って比較的高いドリンクを買い、写真に撮ってインスタグラムにあげたりしています。いつになったら口をつけるのかという感じで、ようやく飲むというのが、今の高校生たちのスタイルです。「ときの杜」では、若い人たちのこうしたスタイルを意識して、ドリンクとスイーツが融合した新感覚のドリンク「potea(ポティー)」を展開することにしました。スイーツとドリンクが合わさったものなので、持って動きやすい上に、コミュニケーションも取りやすい。若い人たちに向けて未来を提案するような要素を持たせました。

 高校生の親世代なら「壺屋」は、「雑木林」のイメージかもしれませんし、祖父母世代になると、「壺もなか」でしょう。「ときの杜」は、こうした各世代にある「壺屋」の時代感を意識した店づくりにしています。以前から「壺屋」をよく知っている人たちに向けては、復刻版のお菓子を、現在の「壺屋」のファンには、2017年にスタートしたチョコレートブランド「RAMS(ラムズ)」や人気の低糖質クッキーなど健康を意識したスイーツも提案しています。このように3世代が入り混じって、面白いコミュニケーションが生まれれば良いと思います。

 ーー新感覚ドリンク「potea」が生まれたきっかけは。

 村本 「potea」のブランドは、社内で議論しながら出てきたものですが、きっかけは入社2年目の若手社員たちの、「お菓子の技術をドリンクに生かせないか」という提案でした。高校生は「壺もなか」を食べないかもしれませんが、ドリンクに「壺もなか」があれば食べるかもしれないという発想から生まれました。「壺屋」の未来を担っていく若手社員たちが結集し、試行錯誤を経て作り上げたものです。
 店舗の内装にも力点を置きました。以前も、丸井今井が「フィール旭川」に変わる時、新しいコンセプトの店舗を計画しましたが、出店できませんでした。今回は、ツルハさんから声を掛けていただき、以前から交流のあったカンディハウス(旭川市)の藤田哲也会長に相談するなどして、旭川出身の世界的建築家、藤本壮介先生をご紹介いただきました。藤本先生をはじめ、当社のデザインをお願いしているデザイナーやコピーライターの方々に手弁当で集まっていただき、どんなお店が良いかを話し合った結果、北海道の森の中を表現した独創的なデザインになりました。自然豊かな北海道で歴史を刻んできた「壺屋」の歩みと、この先にある未来を感じられるような設計になっています。

 ーー「potea」には世代間を繋ぐ効果も期待しているそうですね。

 村本 高校生の娘さんは、「potea」というドリンクにのった「壺もなか」の話をしていても、親や祖父母の世代は本当の「壺もなか」の話をしている場合が出てくるでしょう。家庭での嚙み合わない会話が、やがてひとつに繋がっていくような食卓の団らんが生まれてくればうれしいですね。当社の理念である「甘味求真」に則って、幸せな空間を創造することに繋がることを望んでいます。
「壺屋」の顧客は、どちらかというと年配者が多い。2014年に市内6条通19丁目に「き花の杜」をオープンさせましたが、こちらの店舗は30代や40代が寛げる場所になっています。き花の製造工場と一体になっているので、子育て世代のモノ・コト消費の体験型施設になっています。これに対して、「ときの杜」は3世代が集うということで、特徴的な店舗になると思います。

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