札幌証券取引所小池善明理事長が語る「アンビシャス市場の改革」、「来年1月に誕生する日本取引所との連携策」

経済総合

 東京証券取引所と大阪証券取引所の合併によって地方証取としての札幌証券取引所の存在意義が改めて問われようとしている中、札証は6月から新興企業を対象とするアンビシャス市場の上場基準を改正する。札証本則市場へのステップアップ市場としての性格をより明確にしたものだが、改革はそれだけに留まらない。新たに誕生する日本証券取引所との関係強化も避けて通れない課題だ。小池善明理事長にアンビシャス改革と来年1月に誕生する日本取引所との連携策について聞いた。(写真は、小池善明理事長)
 
 ――アンビシャス改革の狙いは。
 
 小池 アンビシャス市場は、株式公開の玄関の役割を持つので、北海道の会社が上場しやすいようにしたのが一番のポイント。玄関を広くして敷居(上場基準)を低くするから、入りやすくなるということだ。
 
 ――3億円以上という時価総額基準を撤廃しました。
 
 小池 何のために上場するかというと、資金調達のためというのが頭にあったので時価総額の基準を決めていたが、資金調達のために上場しなくても良いし、公募増資なしでも構わないように変えた。そうすると時価総額とは何なんだということになる。私は、そもそも時価総額というものをあまり信用していない。確かに目安ではあるが、あまり意味がない。一方で、資本金、純資産、累積利益額の基準はきちんと設ける。
 
 ――株主数についても緩めたそうですね。
 
 小池 何が障害になっているかをヒアリングした中で、現状の株主数200人はきついということだったので、最初はこれも外そうかと考えた。しかし、上場というのはパブリックオファリング(IPO)だから、やはりある程度社会性を持っていただかないといけない。それで、100人程度の最低株主数は必要とした。企業の経営管理を向上させることを上場のメリットに考えてもらいたいと思う。
 
 ――相当、思い切った改革です。
 
 小池 金融庁もなかなか面白いと言っている。アンビシャス市場は株式公開のトライ市場だからでそんなに(上場が)難しくないことをアピールしたい。証券会社の推薦書も簡略化している。ただ、入ってもらうのは楽にするがウォッチは厳しくする。
 
 ――アンビシャス上場後、3~4年で本則市場へのステップアップを促す昇格基準も改善しましたね。
 
 小池 本則市場の基準は変えていないが、アンビシャスから本則へ行きやすいように改善した。29日に上場する北の達人コーポレーションもアンビシャスから早いうちに本則へ上がりたいと言っている。そういう企業を沢山作りたい。アンビシャスをステッブ市場として使って欲しい。
 
 ――道内に縁のある企業に限定する地域特化市場の規定も盛り込むそうですが。
 
 小池 隠れ上場ではないが、市場だけ借りて上場したあとの検査もやりにくいような遠くの会社はご遠慮いただく。製造拠点や営業拠点など、北海道に企業の基盤がない会社は上場できないようにした。そういう企業は本則などで上場して欲しい。アンビシャスはあくまで地元性を重視、地元の雇用や経済に貢献している企業に上場という場を提供するのが我々の役目だ。
 
 ――道内に上場を目指す企業は見込めますか。
 
 小池 食産業振興を図る『フードコンプレックス』もスタートしたので、食品関係やものづくり企業を期待している。また、新幹線の札幌延伸によって沿線開発なども今後出てくるため、それを見越したビジネスが当然盛んになってくると考えられるので様々な企業が生まれてくると期待している。
 
 もちろん、本州企業でもこちらにデータセンターやシステム基地を設置しようというところには是非上場してもらいたい。
 
 これまで上場にあまり興味を持たなかったような道内の老舗企業も、名士としての経済活動だけでなく、経営管理や社会性を整備するためにも上場という手段を取って欲しい。
 
 ――東証と大証が来年1月に合併しますが、札証の存在意義がより薄まるのでは。
 
 小池 東証が上場を目指す地方企業の発掘に力を入れるというが、東京で地方の企業について十分把握できるとは思えない。地場のことが分かっている我々と組むことが最善だろう。我々が道内で上場意欲のある企業を探すが、いきなり東証ではバーが高すぎる。札証へ上場してから東証へ行きやすくするようなシステムが作れないかと考えている。アンビシャスから札証本則へ行きやすい環境を整えたように、札証から東証へ行きやすくする環境を今後検討していきたい。
 
「日本取引所」が誕生すると、『マザーズ』、『ジャスダック』、『2部』、『1部』をどうするのか、あるいは地方企業の上場をどうするのかという課題が当然出てくる。その時に我々として提案、連携を持ちかければ良いと思う。その時には福岡証券取引所も同じ立場になるので一緒になって取り組めたらと思う。
 
 ――会員制法人の札証が改組して株式会社になるという方向性は。
 
 小池 形は何も否定しない。大切なのは機能だ。北海道の企業がステップアップしやすくなるのならどんな形でも良い。形ではなく、実質で何が一番地元に役に立つかと考えればいいと思う。成長性のある企業をどうやって育成するかが地元の経済に貢献することに繋がるので、そのためにはどういう仕組みや制度にすれば良いのかを考える。結果的に、札幌に取引所機能を残していくのか、あるいは取引は東京に回すのか、そういう議論はあると思う。

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