多店舗展開を図る外食チェーンなどに向けた売上げ管理や従業員の勤怠管理などクラウド型店舗管理システムを提供しているイー・カムトゥルー(本社・札幌市中央区)が昨年10月、東京証券取引所の「東京プロマーケット」に上場した。道内企業で同市場に上場したのは初めて。上場から4ヵ月、上田正巳社長に上場の狙いや効果、今後の成長戦略などを聞いた。2回に分けて掲載する。IMG_2703(写真は、上田正巳社長。左の盾は東証上場記念の盾)

 ――道内企業として「東京プロマーケット」に一番乗りですね。なぜ、この市場を選んだのですか。
 
 上田 上場に至るまでの期間が短くて済む点です。当社は、「上場する」と意思決定しておよそ1年で上場を実現しました。札証アンビシャス市場への上場でも3年間はかかりますから、圧倒的にスピードの差があるのが魅力でした。本当は6ヵ月で上場する予定だったのですが、東証のレギュレーション(上場基準)が昨年春に変わったので延びてしまいました。それでも12ヵ月で上場し上場会社に付される4ケタの証券コードを取得することができました。
 
 ――なぜ上場を目指したのですか。
  
 上田 当社の事業がクラウドを利用したITサービスというのが大きな理由です。提供サービスとか内容は良くても、札幌の地方ベンチャーにお客様の大事な心臓部分となるデータや機能を委ねて良いものかという疑問にこれまで応える術がありませんでした。上場という選択をすれば、財務内容が監査され、東証の審査も受けるわけですから信用力が担保されます。ただでさえクラウドという雲の上にデータがあるという業界なので上場の意義はとても大きい。
 
 ――上場すると決めたのはいつころですか。
  
 上田 そもそもイー・カムトゥルーという会社は、2000年の設立時から他人資本を大量に導入していますから、どこかの時点でIPO(新規株式公開)を意識していました。創業から数年間は監査法人を入れていましたし、主幹事証券になる証券会社と契約していたこともあります。
 しかし、業況や成長スピードから言ってIPOはなかなか難しくて、業績が悪化したとき監査法人や主幹事証券との契約も解消しました。そうした状況の中でも2013年の夏ころにフィリップス証券から『短期間でプロマーケットでの上場は可能』と提案があったので、それではと、検討を始め、昨年から本格的に上場準備に入ったのです。
  
 ――事業の中身を教えてください。
 
 上田 主力は店舗の売上げデータ管理、従業員の勤怠管理などを行い利益管理が毎日できるようにするシステムです。売上げと人件費が分かると粗利が出るので、毎日の粗利を管理するシステムと言ってもよいでしょう。クラウド利用なのでサーバーは必要なく低価格です。業種では多店舗展開している飲食業が全体の6割で一番多いのですが、理・美容、エステ・リラクゼーション、物販、リサイクルショップ、調剤薬局などのチェーンも顧客です。現在の顧客数は約160社、約3600店です。
 シンガポールには現地法人を設立しています。現地でカフェ、居酒屋などをチェーン展開している日系4社とタイで日本酒バー、かき氷店を展開している日系2社が顧客です。
 
 ――上場のメリットをどう感じていますか。
 
 上田 上場に際して公募売り出しは行いませんでしたが、プロマーケットは“Jアドバイザー”と呼ばれる東証から承認を受けた上場審査機関が上場スケジュールを公表する特徴があります。他市場への上場では上場日などはディスクローズ(情報公開)できないのですが、プロマーケットではすべてオープンになります。つまり上場のロードマップが明らかになるので、既存の株主や取引先が第三者割当増資に応じやすくなります。当社は、上場前に約8000万円調達しました。上場費用や東証への登録料などに約3000万円を充当する予定です。
 
 ――実際に10月20日に上場してから事業面での変化はありましたか。
 
 上田 以前は、コンペになったりすると、当社の方が価格や内容では勝っていても『上場企業の提案の方が良いね』と外されたりしました。担当者レベルでは稟議を通しやすい企業に発注するのは当然でしょう。東証に上場してからは、コンペや競合があっても当社を選んでいただけるようになりました。名刺やカタログに東証のマークと4ケタコードが入っている効果はとても大きいですね。ホームページ(コーポレートサイト)からの問い合わせも増えています。(以下、次回に続く)
 

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