日本政策投資銀行の北村潤一郎北海道支店長は、『北海道経済の現状と課題』をテーマに講演、「国の課題解決と北海道の発展を両立する投資を呼び込むべきだ」と述べ、日本が本格復興へ向かう中で日本全体の防災力向上を図るために産業や人口の集積地から離れた地政学的な位置や電力供給環境が本州と異なる北海道は大きな武器になると強調した。この講演は、社団法人北海道住宅都市開発協会と札幌商工会議所の共催で4月27日に行われた。(写真は、講演する北村潤一郎氏)
北村支店長は、北海道経済の現状について、「将来の衰退懸念が大きい。北海道の潜在力を活かすコア企業や成長ビジネスが不在」と指摘。かつて北洋漁業と石炭など原燃料の移出で、高度成長期を全国と足並みを合わせるように成長してきた北海道経済の凋落は激しく、一人当たりの県民所得は1955年の全国7位から2009年には32位に転落。
その原因として①公共事業依存の脱皮が遅れ持続的成長を支える基幹産業不在②人口減少・高齢化の進展③地域経済を支えてきた公共セクターの予算縮小――の3点を挙げる。
2000年以降は全国的にプラス2%程度の実質GDP成長率があったが、北海道はマイナス圏内で推移。北村支店長は「将来的にはより厳しい状況になる」とし、東日本大震災による復興・復旧需要についても「震災による直接被害はそれほど多くなかったし、復旧投資も多くは見込めない」と語る。
北村支店長は、経済の強みや弱みなどを分析するSWOT(S=ストロング・強み、W=ウイーク・弱み、O=オポチュニティ・機会、T=スレット・脅威)分析で、北海道経済は機会に恵まれている点を活かす道を提言する。
機会として掲げたのは、東日本大震災を受けた拠点分散、サプライチェーンの再構築や再生可能エネルギー分野における事業の活発化、さらに北海道フードコンプレックス国際戦略総合特区の採択、新幹線延伸による交流拡大。
「日本が本格復興で今後の対応力を高めて行く中で、広大な土地資源や電力のピークが冬場にあって本州とずれていること、石狩湾新港、苫小牧港の2港体制があることなど北海道の特徴は大きな武器になる。食糧安全保障でも優位な立場だし、国の課題解決と北海道の発展両立する道を進むべき」とした。
北村支店長は、京都生まれの京都育ちだが、両親が根室出身で北海道には縁があるという。昨年6月に北海道支店長として赴任、初めてシーズンを通して雪を経験した。雪かきや除雪費、雪害などを目のあたりにして、「人口減少や高齢化が進めば、地方では冬場だけでもそれぞれの地方の拠点に移り住むことを考えたらどうだろう。また、札幌一極集中が進んでいるが、地方の空き家などを夏場に本州から避暑を兼ねて訪れる観光客に使ってもらうようなことも工夫しても良いのでは」と同じおカネを使うのならこの方向での投資も効果的と語った。
日本政策投資銀行は、地域版の投資銀行として活動していくことが大きな目的になっている。講演後、北海道リアルEconomy記者が、コミューター航空として岐路にある北海道エアシステム(HAC)について投資する考えを聞いたところ、「HACについては考えたことはないが、離島航路には関心を持っている」と述べた。