北海道の若手経営者を集めて経営観や人生観を磨いてもらう「北海道経営未来塾」(北海道商工会議所連合会、札幌商工会議所、北洋銀行、北海道銀行、未来経営研究所でつくる実行委員会主宰)は7日、札幌市中央区の道銀本店で3期目最後の経営実務講座を開催した。塾生ら約40人が参加、外務省北米局北米第二課課長の股野元貞氏と道銀会長、堰八義博氏の講演を聞いた。(写真は、講演する股野元貞氏)
(写真は、リーダー論について講演する堰八義博氏)

 股野氏は、『日米関係を取り巻く状況』をテーマに講演。1980年代から現在までの貿易問題を柱に、日米関係の変遷を説明した。現在の米国の内政事情について「2020年の大統領選に向けた動きがいつもの大統領選よりも早く始まっている。大統領選はエンターテインメントの要素が強く、株価や人口動態の問題にプラスしてその人物の『面白さ』というエンタメ部分が投票者の行動を決める大きな要素」と話し、「真面目に分析していても予測通りの結果にはならない」とした。

 安倍晋三首相とトランプ大統領の関係について、「非常に良い」と述べ、「小泉ーブッシュ以来の良い関係なのは、安倍首相がトランプ大統領を(国内世論をバックにツイッターなどで)不当に“口撃”しないため。互いに信頼関係がある。リーダーは孤独なためリーダー同士の友情はより強くなるもの」と解説した。

 股野氏は、両首脳の良好な関係は今後の日米交渉の“資産”になるとした上で、「でもトランプ大統領は予測不能でどうなるかはわからない」と締め括った。

 続いて、堰八氏が登壇、『真のリーダーとは~私の銀行員人生より』をテーマに講演。道銀が不良債権で苦しんだ90年代後半、北海道拓殖銀行との合併準備、破断、北陸銀行との経営統合の流れを説明。2000年、45歳で取締役に就任し47歳で代表取締役、48歳で頭取に就任したが、「頭取になった時、外部から『堰八って誰だ』、『大丈夫なのか』という声が多かった。それまで1人を除いて大蔵省出身の頭取だったが、私は初のプロパー。実務を経験したことを強みに、行内の一体感を再構築することに邁進した」と振り返った。

 頭取就任後、なぜ多額の不良債権をつくったのかを調べるため、常務会の議事録を一つ残らず読んだという。「役員全員が右肩上がりを信じていた。誰も悪意があって不良債権をつくったのではなかったことがわかったが、特定の役員の一声で融資が決まるケースもあった」と述べ、「営業推進と経営管理は車の両輪、どちらか一方が強くてもいけない。コーポレートガバナンスの重要性を強く認識した。例え頭取でも1人では1000円も融資できないようにした」と説明した。

 塾生からの質問に答える形で頭取に選ばれた理由について、「(当時の藤田恒郎頭取から)聞いたこともないので正直わからない。ただ、当時私は経営企画部長としてこの銀行を潰してはならないという一心で上司にも『何をやっているのか』と声を荒げたこともあった。本店売却も決め、先輩諸氏から非難されたこともあったが、そうしなければ潰れてしまうと思ったから。その姿を(藤田頭取が)見ていたのかもしれないが、本当の理由はわからない」と話していた。

 堰八氏は最後に、AKB48の『365日の紙飛行機』の歌詞に触れ、自ら歌いながら「距離を競うのではなく、どう飛んだか、どこへ飛んだかが一番大切。塾生の皆さんも北海道のため、世界のためにどう経営するかを常に考えることが大切だ」と訴えていた。


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