金融機関債務の条件変更を認める中小企業金融円滑化法が来年3月末まで再延長されることになったが、道内中小企業の足元の景況感はどうなのか――北海道信用保証協会の吉澤慶信会長にインタビューし、保証承諾件数や代位弁済の推移から実態を探ってみた。(写真は、吉澤慶信会長)
――保証承諾件数の変化はあるか。
吉澤 月別に見ると11月から1月まで3ヵ月間の保証承諾件数は前年同期間比で落ちている。12月は年末の資金需要期なので保証承諾件数が前年よりも増えると想定していたが、予想よりもかなり少なかった。1月は3割近くも減り、2月も同様の件数で推移している。
――保証承諾の件数が減っていることからどんなことが分かるのか。
吉澤 中小企業は資金を借り入れて事業の拡大を図ることに躊躇していることがわかる。新たな資金を借り入れるよりも、企業の財務状況を健全化することに注力しているようだ。新たな借り入れではなく債務の圧縮など守りの姿勢ということだろう。景況感は、より厳しい方向になっていることを肌で感じている。
――金融円滑化法による条件変更はどう推移しているのか。
吉澤 円滑化法による条件変更の申し込みは、一ヵ月平均で500~600件ある。1月の条件変更は551件で条件変更した債務の総額は62億円。条件変更は1年単位の場合が多く、2回目、3回目の条件変更になっている。
――これまでに条件変更した債務の総額はいくらか。
吉澤 当協会の保証債務残高は昨年4月から今年1月末までで9705億1500万円だが、そのうち条件変更した保証債務残高は718億円だ。
――円滑化法は条件変更によって中小企業の再建を促すのが目的だが、再建は進んでいるか。
吉澤 条件変更で再建が軌道に乗ったところとそうでないところに分かれていく。条件変更したが、代位弁済に回る件数は多い。条件変更したものの1月末までで79億円が代位弁済に回った。代位弁済は、今年度に入って233億円あるが、3分の1が条件変更後の代位弁済だ。期間が長くなると条件変更した債務が劣化していくケースはあり得る。
――円滑化法による条件変更とともに協会も変更先への経営支援を強化しているようだがー。
吉澤 金融機関と連携して協会も融資先への経営支援、指導を強化している。いわゆるコンサルティング機能を高めて再建を促していく体制を取っている。また、資本金1億円以上の企業に対しては協会単独でもコンサルを行うことにしている。中小企業診断士は現在7人在籍しており、支援体制は強化していく。
吉澤会長は、建設、卸、小売りなど道内経済を支える中小企業が厳しい景況感を抱いていることを示したが、北海道の経済構造を考えると長いトンネルを脱するのは簡単なことではない。保証協会の承諾も、多くは運転資金で設備資金などいわゆる前向きな資金供給には結びついていない。「北海道新幹線や国際総合戦略特区北海道フードコンプレックスに期待する」と吉澤会長は言うが、それまで中小企業が持ちこたえられるのかという問題もある。
保証協会は経済基盤の一端を担う重要な役割を持っているが、景気好転の兆しが出てくれば積極的に資金供給を進める独自策も必要になってくるだろう。そういう意味ではコンサル機能の一層の拡充が望まれる。