コープさっぽろ(本部・札幌市西区)の「しんことに店」(北区新琴似1条11丁目)が22日オープンする。既存店の「新琴似南店」(新琴似2条7丁目)を移転新築するものだが、「しんことに店」はコープさっぽろが新琴似地区で高いシェアを誇っていたころの勢いを取り戻すための戦略店舗でもある。至近距離にはライバル、ラルズ(本社・札幌市中央区)の「ビッグハウス新川店」もある。スーパーの“新川冬の陣”と言われる所以だ。(写真は、オリックスが整備する商業施設「クロスモール新琴似」内にオープンする「コープさっぽろしんことに店」)
コープさっぽろの草創期、新琴似地区はまさにコープさっぽろの牙城だった。昭和50年代は旧「新琴似店」、「新琴似南店」、旧「屯田店」がコープさっぽろ店舗の中でも稼ぎ頭ビッグ3と言われ、地域で圧倒的なシェアを誇っていた。
しかし、時代とともに競合店の出店や異業種の参入で輝きは徐々に衰退。GMS(大型スーパー)並みの旧「新琴似店」は時代に取り残されるように10年ほど前に閉店、旧「屯田店」も同様だった。コープさっぽろのドミナント(集中出店)地区だった新琴似地区は「新琴似南店」のみを残し、同地区での存在感は色褪せていった。
そして巡ってきたのが「新琴似南店」の建て替え。老朽化した狭い面積の店舗では戦えない、新琴似地区で再び輝きを取り戻すには面積を増やし最新フォーマットを採用した店舗を作ることが必須だーーこうしたコープさっぽろの思いを投影して22日にオープンを迎えるのが「しんことに店」だ。
コープさっぽろ札幌西地区本部の外川雅喜本部長は、「新店舗は、『新琴似南店』と旧『新琴似店』を移転集約した位置付けで、もう一度新琴似地区でしっかりした基盤をつくることが目的。狭かった『新琴似南店』では出来なかった商品提供やサービスを新店舗で実践する」と言う。店舗面積は「新琴似南店」の約400坪から約650坪に拡大。焼き立てパンやデリカの充実など10月18日に移転新築した「なかのしま店」(札幌市豊平区)のMD(販売政策)を踏襲する。
オリックス(本社・東京都港区)が手掛ける複合商業施設「クロスモール新琴似」内の店舗になるが、ここには衣料専門店やメガネ専門店などのほか保育所やクリニックも整備される。とりわけコープさっぽろが期待しているのは来春開設予定の保育所。「子育て中の女性も働きやすい環境が整うのでパート従業員の採用面で優位になる。人手不足の時代、同じ敷地内に保育所がある店舗としてアピールできる」(外川氏)
「しんことに店」は、奇しくも「ビッグハウス新川店」に近い立地になった。その点について外川氏は、「コープさっぽろの店舗がラルズの店舗のすぐ近くに出店するケースはおそらく初めて。品質とこだわりの『おいしいお店』の店づくりを徹底するとともに価格でも引かない覚悟で臨む」と話す。「しんことに店」の目標年商は20億円以上という。コープさっぽろが新琴似地区での再興を託す戦略店舗「しんことに店」には、コープさっぽろ役職員の熱情が込められている。