札幌大学(札幌市豊平区)のロシア語担当の元特任准教授の女性(45)が、違法に雇い止めされたとして札幌大を相手に地位確認などを求めていた訴訟でその女性は8日、札幌高裁が控訴を棄却した判決(9月24日)を不服として上告した。それと同時進行するように札大の鈴木淳一学長(68)が任期途中で辞任する。何らかの関係があるのだろうか。(写真は、札幌大学中央棟)
女性は、札大ロシア語学科を卒業し東京外国語大学修士課程を卒業。札大は2008~9年当時、度重なるロシア語特任教員の突然の退職で困り、長期にわたり働いてもらうことを目的に卒業生から優秀な人材を採用する方針でその女性を採用。その後、女性は6回の契約更新をして特任准教授としては初めて教職課程も担当。また、教授会や各種業務などにも特任教員の校務を超えて出席を課せられていた。このため労働契約更新の期待する合理的理由があったと主張。
9月24日の控訴審判決で冨田一彦裁判長は、「労働契約更新を期待する合理的理由がなく控訴人(元特任准教授)の主張は採用できない」と棄却、札幌地裁判決を支持した。
高裁の審理から女性側は元副学長から受けたセクハラ・ストーカー被害を大学に相談したことが雇い止めに影響したとの主張を加えた。この点について冨田裁判長は、「労働契約が更新されると期待を抱いたかどうかは無関係」と退けたものの、セクハラ・ストーカー被害の事実は認定している。
女性は上告について、こうコメントしている。「改正労働契約法を悪用した違法な雇い止めが全国的に横行しており、非正規労働者は精神的にも経済的にも極限状態に置かれています。人間が部品のように使い捨てにされる社会に未来はありません。この悪循環を断ち切るために、最高裁判所には、改正労働契約法19条に関する規範・指針となる判断を示していただきたい」
なお、控訴審判決が出る数日前に札大鈴木淳一学長は法人側に辞任届を提出、任期途中の11月15日付で辞任することになった。鈴木学長はその女性の札大学生時代のロシア語担当教授で、女性が特任教員に採用された後も鈴木氏の授業を代講するなど師弟関係だった。鈴木氏は、女性が元副学長から受けたセクハラ・ストーカー被害とも関係しており、女性の雇い止めにも関わったとされる。
鈴木学長の任期は21年3月末までだったが、突然の辞任届提出は札大教員の間でも波紋が広がっている。女性の控訴審判決と上告、それと同時進行している鈴木学長辞任は点と線で関連しているのか。