吉野家HD安部修仁会長が北海道経営未来塾で熱弁、「最悪期こそ全力で目の前のことに向き合え」

経済総合

 北海道から世界に羽ばたく経営者を育てようと産官共同で取り組んでいる北海道経営未来塾(塾長・長内順一元ニトリ特別顧問)の2019年度第4回の講座が12日、札幌市中央区の札幌パークホテルで開催された。講師は吉野家ホールディングス(HD、本社・東京都中央区)の安部修仁会長。今回も第3回に続き公開とせず35人の塾生を対象にした講座となった。(写真は、北海道経営未来塾で講演する吉野家HDの安部修仁会長)

 安部会長は、『吉野家V字回復の軌跡~逆境の経営学とリーダーシップ~』をテーマに90分間講演。福岡出身の安部氏はプロのミュージシャンを目指して1967年に上京、70年に吉野家にアルバイトで入り72年に正社員になって以降、会社更生法による再建時代やBSEで牛丼販売を休止した際の対応、次のリーダーを選ぶポイントなどを話した。

 安部氏は、吉野家2代目で実質的な創業者である松田瑞穂氏に心酔、『親父』と親しみを込めて呼んでいたことを紹介、「親父は吉野家を家族経営から事業に引き上げることを考えていた。私が入った時はまだ東京都内で5~6店舗。その時に早くも牛丼単品で全国200店舗を目指し、人材の調達と育成、組織開発に全力を注いでいた」と述べた上で、「親父は、『なくても良いものはなくて良い、ないよりあった方が良いものもなくて良い、なくてはならないものに集中特化する』ことを最優先した。それが吉野家の『はやい、うまい、やすい』の原点」と語った。

 急激に成長したため綻びが拡大して80年に倒産。吉野家は会社更生手続きによる再建を進めることになった。「それまでの成長とスピード重視の社風から対極に転換したが、モチベーションが起こらない時に社員たちをどう奮起させるか大いに悩んだ。例え論理を共有できてもそれを共感に高めないとモチベーションは上がらない。共感には“1on1”が必要。つまりフェーストゥフェースのアナログで話し合いしかない」と話した。

 その他、安部氏は「絶頂期に始めたことは失敗の起点になることが多い」、「良くなっていく起点は、どん底の時にも全力でやること。未来がわからなくても目の前のことに向き合いきっちりと実行することの連続性によって周りの風景が変わってくる」、「次のリーダーを選ぶ条件は、人を大切にする魂があるか、スキルが高いか、未来を想像していく力があるかの3つ」など、塾生に向けて熱く語っていた。

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