中小企業金融円滑化法が、2013年3月末まで1年間再延長されることになったが、再生に詳しい札幌市内の弁護士は、「円滑化法の目的は中小企業の再生。しかし、現状では再生は進んでおらず来年3月末以降にはバブル崩壊に近い状況が再来する可能性が高い」と言う。かつてのバブル崩壊は「大都市」、「大企業」が中心だったが、円滑化法切れに伴うバブル崩壊は、「地方」と「中小企業」が中心になる怖れが強い。再延長によって1年間の猶予がある中で確実な再生が進まなければ、第2のRCC(整理回収機構)を設置する必要性も高まってきそうだ。
中小企業金融円滑化法は、融資を受けている中小企業が、返済猶予(モラトリアム)や貸し付け条件を最長10年間にする緩和策(リスケジューリング)を金融機関に求める制度。金融機関はその求めに応じる努力義務がある一方で、融資先企業に対して抜本的な再生計画を作ることを条件にしている。
道内では09年12月の同法施行以降で約5万5000件が対象になっている(11年9月末現在)。しかし、現状では再生に向かっている中小企業はひと握りで、多くの場合は一向に好転しない経済環境によって再生計画そのものの見直しが必要と言われている。
前出の弁護士は、「抜本的な経営改善計画を作っても収益が上がらなければ再生はできない。景気がある程度でも持ち直してこなければ、円滑化法が来年3月末で切れたら隠れている不良債権が表面化しかねない」と危機感を訴える。
さらに、この弁護士は最悪のシナリオとして、中小企業版のバブル崩壊の可能性に言及する。
「不良債権が発生すると、その処理をするために金融機関にダメージが及ぶ。円滑化法のツケは金融機関への公的資金注入という形で表面化してくるのではないか」
また、バブル崩壊時に設置されたRCCと同様の組織が再び必要になってくる局面も出てきそうだという。
中小企業金融円滑化法は、事業再生と一体となってこそ本来の効果を発揮するものだが、現状では再生に黄信号が点っている。円滑化法が切れる来年3月末以降に新たなソフトランディング政策がなければ、中小企業が支える地方経済の困窮はさらに深刻になりかねない。