“副業”ならぬ“複業”を社内制度に取り入れているサッポロドラッグストアー(本社・札幌市北区)。2010年から設置している「ハタラキカタカエル委員会」では、働きやすい職場環境の整備に取り組み、”サツドラジョブスタイル“として様々な制度を導入してきた。複業もその一つで、久保智人さん(33)はサツドラホールディングス(以下、サツドラHD)のグループ法務部マネジャー兼インキュベータチームとして働く傍ら、「企業法務Matching」の屋号で個人事業主の顔も持っている。(写真は、「企業法務Matching」を複業にしている久保智人さん)
久保さんが個人事業主として取り組んでいるのは、道内に企業法務を定着させること。企業法務に関心を持っていた久保さんは、大学卒業後に大手食品卸の法務担当者として活躍、17年にサツドラHDに入ってからは「法務部」を組織化するなどしてきた。
M&Aや提携、事業承継、コンプライアンス、最近ではバイトテロ問題なども頻発し法的根拠に基づく企業行動が求められているものの、実際に道内企業で法務部やコンプライアンス室などの組織があるのは上場企業でも10社程度にすぎない。首都圏のように、企業法務の裾野があまり広がっていない現状に久保さんは問題意識を持った。
そこで昨年夏、東京に拠点を置く日本で唯一の企業内法務部門に特化したサービスを提供しているMoreーSelectionsと提携、さらに国内外合わせて18拠点を有し、世界トップの探偵会社のみが加盟を許されるW.A.D(世界探偵協会)に所属する札幌本社のアイヴィ・サービスとも提携、道内企業を対象に企業法務サービスを展開できる体制を整えた。
企業向けに仮想の契約書の作成やリーガルチェックの基礎知識、実務の問題点などを指導・教育する法務教育研修、企業が法務部を設立するための教育や研修などを行うサービスを実施している。
こうした活動を進めていく中で、企業の法務担当者や大学生、弁護士との交流がほとんどないことに気づく。「裾野が広がらないのは、交流が少ないことも要因。情報交換や人脈づくりのための場を設け、企業ー大学(学生)ー弁護士の三者間での人材流動化の環境をつくっていきたい」(久保さん)
具体的には、4月18日にMore社と企業法務Matchingの共催で企業法務交流会を札幌で初開催する。東京証券取引所1部上場のホクリョウ(本社・札幌市白石区)社外監査役や同じく東証1部、フルテック(同・同市中央区)の社外取締役を務める岡崎拓也弁護士が最新情報を講演、その後は交流会も予定されている。(申込先https://www.corporate-legal.jp)
また、法律を学んでいる学生を対象にサツドラHDで2019年度から「リーガルインターンシップ」も受け付けることにした。希望する学生を対象に1~2ヵ月間、5~10人の範囲で就業体験を受け付け企業法務の現場を知ってもらうのが目的。インターンシップでの蓄積をもとに20年度からは企業向けに「企業法務実務講座」(仮題)をスタートさせ、修了後には民間資格が得られるような体制も導入したい考え。
久保さんは、「企業の法務関連のニーズと弁護士、学生を繋いで道内の企業法務の発展に貢献するのが個人事業主としての私の願い。今年を企業法務定着に向けたスタートの年にしたい」と話している。