緩やかな回復を続けてきた北海道経済は、9月6日に発生した北海道胆振東部地震の影響で下押しリスクが高まっている。ただ政府や北海道の早い対応で影響が長期化することは避けられそうな情勢だ。そこで、今年4月に北海道経済同友会代表幹事に就任した石井純二氏(北洋銀行会長)に、震災復興に向けた課題や地方創生、北極海航路、さらに未来に向けた提言などを聞いた。冷静な口調の裏にある石井氏のパッションがうかがえたインタビューになった。
【いしい・じゅんじ】1951年5月生まれ、67歳。弘前大学人文学部卒、75年4月北海道拓殖銀行入行、98年11月北洋銀行業務推進部管理役、2004年大通支店長、同年6月札幌北洋ホールディングス(HD)取締役・北洋銀取締役大通支店長、06年4月北洋銀常務業務企画部長、10年6月札幌北洋HD取締役副社長・北洋銀副頭取、12年4月札幌北洋HD社長・北洋銀頭取、12年10月に北洋銀が札幌北洋HDを合併、存続会社北洋銀頭取、18年4月取締役会長就任。15年6月からJR北海道監査役を務める。18年4月5日、横内龍三前北洋銀会長に代わって北海道経済同友会代表幹事に就任。
--最初に北海道経済の現状認識からお聞きします。北海道胆振東部地震によって下期は影響を受けそうですが……。
石井 地震発生前まで道内景気は緩やかな回復基調を維持しました。道内全体のGDPの6割を占める個人消費は底堅く推移、消費者物価は20ヵ月連続前年を上回っている状況でした。公共投資と住宅投資は若干前年より下回っていましたが、設備投資、あるいは輸出の好調に加えて外国人観光客が増加して観光関連が全体の景気を牽引していました。
景気の先行き判断DIも3ヵ月連続で50を上回っていました。9月6日に発生した地震と停電の影響で、景気の下押しリスクが高まっています。道庁が10月5日に公表した全体の被害額は、2089億円に達していて、拡大する見込みです。社会インフラの再整備はもとより、商工業者の停電による営業の取りやめ、あるいは商品の棄損、観光では114万9000人泊のキャンセルも生じました。特に観光への被害は深刻な状況にあると見ています。
9月末に実施された政府の景気ウォッチャー調査を見ると、北海道の現状判断は前月比が実にマイナス11・6ポイントという状況で、DIの大幅な低下が見られます。
順調な回復基調にあった道内経済への影響は大きい。日銀の報告でも地震による下押し圧力が見られるということですので、一刻も早い回復が望まれます。一方で、地震対応について政府や道の対応が非常に素早かった。電力供給も直ちに回復していることから、被災の影響は長引くことはないのではと思っていますし、早期に回復していくことを期待しています。
11月にタイのバンコクに行きますが、北海道の食の素晴らしさをPRして,『北海道は、被災地近辺以外はもう完全に復旧している』と訴えたい。いずれにしても官民挙げての発信を続けたい。また、復旧工事が早期に行われることを期待したい。