食品スーパーは、味や価格の競争が同質化してきたことから次の差別化を模索しているが、方向性の一つが陳列方法や販促用のPOP広告を魅力的にして買い物が楽しくなる環境をつくること。それを追求しているのが、豊月(本部・苫小牧市)が展開している「フードD365恵庭店」(恵庭市黄金南6丁目)だ。(写真は、秋サケのコトPOPを指さす細川貴史店長)
店内に入ると半端ではない陳列やコトPOPが目に飛び込んでくる。コトPOPとは、商品そのものをPRするのではなく、商品を買うことで体験できるコトをPRしたり、豆知識をわかりやすく短文や絵で紹介したもの。「ほとんど私が時間の合間を見て作っています」と細川貴史店長(55)。
陳列の工夫やコトPOPを多用するようになったのは、これまでの「フードD食彩館」から「フードD365」に業態転換してから。365業態は毎日低価格で販売することを基本としているため、どうしても店内は殺風景になってしまう。
豊岡憲治社長(72)から「楽しい店、明るい店に」という指示もあって取り組んだのがコトPOPの充実だった。細川店長は「買い物に来られるお客さまに、一つでも参考になるような体験をしてもらいたい」という一心で試行錯誤を繰り返し、パソコンと格闘しながら現在のコトPOPに辿り着いた。
「お客さまから『店内が明るくなった』、『賑やかになった』と言われるのがうれしいですね」と細川店長。大事にしているのは統一感だという。「コトPOPによって店が雑然としては元も子もありません。いかに統一感を持たせるかがポイントです」(細川店長)。
商品の入れ替え時期に合わせて2週間に1度は新しいコトPOPを店内に設置、購買の動機づけに余念がない。また、棚のエンド部分の陳列方法も“見せる”ことに徹している。コトPOPと連動して売りたい商品を大量陳列、買い物客のわくわく感を刺激している。
この店舗があるゾーンでは、ディスカウントストアのトライアル(本社・福岡市博多区)が昨年11月に新店舗を出すなどスーパー激戦区。そんな中でこの店舗は来店客が増加しており、「前年比で5%程度売り上げが伸びている」(豊岡社長)。パートを含めた店舗従業員80人全員が一体になって、コトPOPや大量陳列に取り組んでいることが大きいようだ。
(棚のエンドは大量陳列のオンパレード=写真)