北洋銀行が北海道大学病院、北海道大学大学院医学研究科がん予防内科学講座と連携して実施している市民医療セミナーの第3回が13日、北洋大通センター4階のセミナーホールで開かれた。今回のテーマは「腰痛の原因と治療」。北大病院整形外科講師の小谷善久氏が集まった市民ら約60人を前に、「腰痛の予防には運動習慣をつけることと減量することが大切」と述べ、ぎっくり腰がなぜ起きるのかなどについても講演した。(写真は講演する小谷講師)
小谷講師は、メタボリックシンドロームという言葉が一般的になったように、「ロコモティブシンドローム」も注目されるべきだと会場に語りかけた。
ロコモティブシンドローム(ロコモ)と言うのは、運動器障害を指す言葉で、運動器障害が腰痛と密接な関係があることを指摘した。運動器とは骨、関節、背骨などのこと。ロコモは暮らしの中で個人の自立度を失わせ要介護になる確率が高くなるという。
小谷講師によると、2000~09年に要介護の人が急速に増えており、その理由は脳卒中と骨折、転倒などの関節疾患が2大理由だとし、ロコモを減らすことが要介護の人を少なくすることに通じると指摘した。
ロコモになるとは片足立ちができないなどバランス感覚の低下や歩き続けると足の痛みや痺れが起きるといった症状が出てくるが、それは筋力低下、骨粗鬆症、変形関節症、腰部脊椎症などによって引き起こされる。
ロコモのひとつである腰痛の原因には、椎間板ヘルニア、腰椎脊柱間狭窄症、腰椎すべり症(変形すべり症と分離すべり症がある)、骨粗鬆症による圧迫骨折、まれに癌の転移のケースもある。激烈な痛みを伴う結核菌などによる化膿性脊椎炎、腎、尿管結石の内臓原因、大動脈瘤、婦人科疾患によって引き起こされる場合もあるという。
椎間板が飛び出して神経を圧迫する腰椎椎間板ヘルニアは、初期に安静にする保存療法や牽引によって7~8割が手術せずに治るが、足首が動かない場合や膀胱・直腸障害が出ている場合は早く手術を勧めていると語った。
小谷講師は、症状によるそれぞれの最新手術法を紹介し「低侵襲固定術が、傷も小さく背骨のダメージ少ない」と紹介した。
自分がロコモかどうかをチェックする簡単な方法として、片足立ちで靴下を履けない、何もしないのに家で躓く、階段の上り下りに手摺りが必要、15分間休まず歩けない――を挙げ、「ひとつでも引っ掛かればロコモを疑わなければいけない」(小谷講師)
ロコモを防ぐロコモーショントレーニング(ロコトレ)として、片足立ちを1分間続けて左右のバランス感覚を高めたり、足の筋肉を鍛えるスクワット、その他にラジオ体操や水泳、水中ウォーキングも有効だという。「何よりも運動習慣と食事のコントロールで減量することが一番」と小谷講師は強調していた。
また、ぎっくり腰について、小谷講師は「腰は間接の集合体。手、足を捻挫するように腰も捻挫しやすい。ぎっくり腰の7・5~8割は捻挫による急性腰痛だから治るが、2~2・5割の中には病気が潜んでいる。年に4~5回慢性的にぎっくり腰になる人は専門家に診てもらった方が良いのではないか。もっとも、ぎっくり腰の場合もオーバーウエートから引き起こされるケースが多い」と述べ、やはり体重管理の大切を訴えていた。