北洋銀と北大の「市民医療セミナー」で武田宏司北大教授が講演、「漢方薬はがん治療やアルツハイマーに効果がある」

金融

 北洋銀行と北海道大学の連携事業の一つである「市民医療セミナー」が26日、北洋大通センター4階のセミナーホールで開かれた。4回目となる今回は、『漢方薬は本当に効くのか』と題して北大薬学研究院医療薬学分野教授・北大病院栄養管理部長の武田宏司氏が講演、市民ら約40人が聴講した。武田教授は、漢方薬の効果を分かりやすく説明、参加した市民から質問が出るなど、漢方薬の理解が深まった様子だった。(写真は講演する武田宏司教授)
 
 漢方薬の市場規模は約1100億円(07年)。医薬品市場の2%を占め、そのうち医師が処方する医療用漢方薬は918億円、薬局でも買える大衆薬は213億円という内訳。漢方薬では、ツムラが医療用漢方薬の8~9割のシェアを持っている。
 
 漢方薬の市場は、98年にインターフェロンと併用した小柴胡湯で死亡例が出たため一時減ったが、それ以降は伸び続けている。現在では全国80の医学部カリキュラムに漢方薬講座が組まれ、01年から医師国家試験にも漢方薬が出題されている。 
 
 漢方は中国の漢の時代に体系化されて日本にも入ってきたが、漢方は日本の医療として独自の発展を遂げてきた。中国の医療は中医学と呼ばれ別の進化を遂げた。
 
 現在使われている薬は、天然物由来のものが7割を占め合成薬は3割ほどだが、「西洋薬はまだまだ不完全。例えばしゃっくりやこむら返りには無力。しかし、漢方薬は手が届く範囲にある」と武田教授は言う。
 
 武田教授が漢方薬を使い出したのは、自身が診察した腎臓癌の患者への対応がきっかけだった。「手術をした患者が吐き続けて西洋薬を投与しても改善せず、原因がわからなかった。ダメもとで漢方薬を使ってみたら吐き気がぴたっと止まった。不思議に思ってそこから研究を始めた」
 
 西洋薬は、単一の有効成分で切れ味が鋭いが、場合によっては副作用もある。しかも病気はひとつの原因だけでなく複数が絡んで発症する場合があり、生薬成分が複数含まれている漢方薬が有効に作用する場合は多いという。
 
「がん治療の現場では、食欲不振、吐き気、下痢、大腸がんの治療では痺れなどの症状が出てくる場合があり、それらの改善に漢方薬が効く」と武田教授。
 
抗がん剤による痺れや神経の痛みには「牛車腎気丸」、「芍薬甘草湯」はこむら返りなど筋肉の痙攣に効く。「抑肝散」は認知症の徘徊など周辺症状に効き、北大では普通に使っている漢方薬だという。
 
 また「六君子湯」は、胃のもたれや痛みに効く。8種類の生薬が含まれており、慢性胃炎で胃カメラを見ても原因が分からない症例に合う。こうした効果は西洋薬にはないそうだ。
 
 武田教授は、「大建中湯」に関するこんなエピゾートも披露。
 
「東京の私大の有名教授は漢方薬を使う医師を怒鳴りつけていたそうだが、自分が腸閉塞になって術後に漢方薬を使ってみたら完全治癒したそう。それ以来、その私大病院では術後に『大建中湯』を使うことがスタンダードになった。多くの外科の医師は『大建中湯』を使うのが好きなようだ」
 
 その「大建中湯」というのは、山椒と生姜の成分が含まれており腸の粘膜の刺激し腸の動きを良くする効果があるという。しかも分単位、その場で効くため即効性が高く、腸閉塞や便秘、腹部の飽満感の解消にも役立つそう。「大腸ではなく小腸を刺激するのも特徴」と武田教授。
 
「漢方薬はエビデンス(根拠に基づいた医療)の実証されたものもあるが、なぜ効くのか謎が解き明かされていないものもある。漢方薬は西洋薬では行き届かない症例に効き、しかも天然の世界から得られるため副作用も少ない。漢方薬の原石がまだまだ転がっているのではないか」と武田教授は結んだ。 

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