今年1月、道南の江差信用金庫(本店・檜山郡江差町)と函館信用金庫(同・函館市)が合併、道南うみ街信用金庫が発足した。預金量は約2643億円(2016年3月末)になり道内22信金の中で13番目の規模になる。少子高齢化による人口減少が進む地方の信金モデルとして新金庫の今後に注目が集まっている。藤谷直久理事長(67)に、新金庫の目指す方向や課題などについて聞いた。(※北方ジャーナル6月号同時掲載)
《ふじや・なおひさ…1950年1月24日生まれ、奥尻町出身、67歳。68年3月江差高校卒、同年4月江差信用金庫入庫奥尻支店勤務。その後、奥尻支店長代理や福島支店、厚沢部支店、函館支店の各支店長代理を務め96年4月審査部審査課長。2004年4月執行役員審査部長兼代理業務課長、06年6月常務理事審査部長、07年6月専務理事審査部長、11年6月理事長》
――合併から4ヵ月が経過しました。率直な感想から聞かせてください。
藤谷 1月23日にスタートしましたが、やっとスタートしたという安堵感があります。スタート直前は職員の戸惑いもありました。業務取り扱いなどは各金庫によってそれぞれ違いますが、新金庫ではほとんどの業務の取り扱いを旧江差信金(以下、旧江差)に合わせましたから旧函館信金(以下、旧函館)の職員は苦労しています。時にはお客さまを待たせることもあります。目下のところ、そこが一番大変なところ。もっとも旧江差のやり方が進んでいるわけではないので、『効率化委員会』を組織してより良い方法を模索しています。
――あらためて合併の目的・使命について聞かせてください。
藤谷 私はただ2つの金庫を合わせて同じ業務を続けても意味がないと思っています。やはり間口を拡大することが必要。多様化、高度化という言い方で取り組んできましたが、1つは高齢化が進む中で相続問題が出てきますから相続信託などの取り組み、あるいは事業承継のアドバイス、預かり資産も考えていかないといけない。さらにM&Aなどコンサルにも力を入れます。当金庫を『何でも相談に乗ってくれる金融機関』と言われるようにするのが使命です。
――それが“地域のホームドクター”という新金庫のキャッチフレーズに繋がるわけですね。
藤谷 そうです。相談しても成就するかどうかわからないですが、とにかく相談は受ける。支店長会議では、『うみ信』の相談ブランドを確立しようと言っています。それがホームドクターになろうということ。
『ゆりかごから墓場まで』という言葉がありますが、当金庫は『ゆりかごから天国まで』を実行していこうと。檜山管内では、自治体の広報誌に結婚したカップルや赤ちゃんの誕生が紹介されます。その情報を集めて、3年後、4年後の保育園入園時期に資金の紹介をしたり、大学進学の際にもサービスを紹介することなどに取り組んでいます。
つまり個人のライフサイクルに合わせた支援です。メガバンクと同じことをやっても負けてしまうので、ニッチな分野を掘り起こしていくしかありません。ちなみに“天国”という表現にしたのは、法要があるからです。地方の法要には結構お金が要りますからね。こうしたことを徹底するためには、渉外力を強化しなければなりません。しっかりと知識を持って、ある程度その場で方向付けできるようにしたい。私が2011年に理事長になってからすぐに旧江差の函館支店と七重浜支店に営業推進部を作りました。渉外専門の外勤部隊です。そこに部長を置いて、預金集め、事業性資金の拡大、融資取引先の新規開拓を専門にやるようにしました。かなり伸びているので、旧函館の支店でも渉外を強化していく考えです。